De5trucT 或日、彼ガヤッテ来タ…
『よぉ、漆黒月ノ覇王』
その声に、強い赤色の髪の彼は振り返る。
「なんだ…残月ノ雨鎖葵(か…、何の用かな…?」
『何の用って連れねぇーな。まぁ、ちょっと様子が気になってな。――それにしても相変わらずだなお前のセカイは…』
そう言うグレーの髪の彼。彼は血を吸ったような蜘蛛の糸に器用に乗り、漆黒月を眺めている。
「………」
『あれから、あいつは現れないか?』
「……」
彼の言うアイツとは、彼女を失った絶望が心を支配してしまった彼の中のもう一人の彼(じんかく)…。
彼の絶望(ちから)は酸ノ雨を降らす程である…。
「心配はない。オレは漆黒月だ。覇王なんだよ…あの時は感じた事のない感覚に囚われただけだ…」
『そうか…。でも、もしまたアイツが現れそうになったらオレを呼べ。オレが話をする』
「話す? 馬鹿な事言うなよ…。あなたは絶望(かれ)を殺す事を目的としている。だが、オレはそれだけは赦さない」
紫の瞳は鋭く彼を射抜き、漆黒の翼を広げた。それは威嚇だった。
残月はふぅと息を吐き、両手を上げた。
『そう怒るな、漆黒月。オレが悪かったよ。だけど、覚えておけよ! アイツが現れたら、オレはお前に言われなくとも、ここに来るからな』
そう言って残月ノ雨鎖葵はそこから消えた。
彼は複雑な気持ちだった。
――オレが人間(かのじょ)に惹かれてしまった事が…最大の罪だから、彼(あさぎ)の気遣いはオレが生み出してしまったに変わりはないのだ…
壊れてく…破壊してゆく……
De5trucT……L05t…
――嗚呼、やっぱり忘れられないんだな……漆黒月。
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