46.そううまくは行かないもの。

パオズ山での生活。
まだまだ、前途多難…




『見上げれば同じ空。<46>』




「名前お姉ちゃん!ただいま〜!」
「あっ、おかえりなさい」
「これお土産!」
「わぁぉ…これはまた…」

悟天くんが軽々差し出してきたモノに思わず一歩後ずさった。
もうだいぶ慣れたとはいえ、まだまだ抵抗は消えません。
…パオズイモリ…

「名前、オラ腹減ったぞ〜」
「僕も〜!」

修行から帰って来たんだから、空腹なのは当然のはず。
それはわかる…
わかるんだけどねっ!!!

「あ、はは、待っててね、すぐご飯にする、から…」

悟天くんが手渡してくるパオズイモリ(まだたまにピクッと動いている)を何とか尻尾を掴むことで受け取りつつ…
あたしは引き攣りながらも、笑顔を見せた。
こんな日に限って、悟飯くんはまだ学校から戻っていない…


…がっ、頑張れあたしっ!!


そんな訳で…少しずつ、本当に少しずつではあるけれど、あたしもパオズ山での生活に慣れてきました。
まだまだ、こうやって大変なこともホントにホントに多いけど…(汗)



『あたし…悟空のことが、好き…っ…』



悟空と気持ちが通じ合って、早2週間。
…まぁ、特別変わったこともなく、仲良くしている。
変わったことと言えば…

「名前」
「ん〜?」

食事を終えて茶碗を洗っている時。
よく悟空はこうして後ろから抱き締めてくるようになった。
もちろん、悟飯くんや悟天くんに見られないように…だけど。
何故かはわからないけど、悟空は背中から抱き締めつつ、洗い物をしているあたしの手元を見るのが好きらしい。

「どしたの?」
「いや…なぁんか、こうすっと落ち着くんだよな」
「あははっ、それはあたしもだよ」

以前と違って、悟空に抱き締められた時、あたしも慌てるばかりじゃなくって、素直に悟空の腕に甘えられるようになってきた。
想いが通じ合って、改めて思うの。

「ホント、すごい」
「何がだ?」
「悟空はこの腕で、今まで何度もこの星を守ってきたんだもんね…」
「あぁ、そだな」

その腕が今、こうしてあたしを抱き締めてくれている。
まるで壊れ物でも扱うみたいに、本当に優しく…
これ以上の安心感はないと思う…絶対に。
そんなことを考えていた時、悟空がふとあたしの肩に顔を乗せてきた。

「オラ、守りてぇモンがもう一つ増えたぞ」

そう言って、あたしの頭をそっと撫でる。
ふと顔を上げれば、間近にある悟空の笑顔。

…神様(デンデくんにあらず・笑)
そろそろ、鼻血の危機です…限界です!

「はははっ、名前また顔が真っ赤になってんぞ〜」
「だ、だって…!!」
「でも、トマトみてぇになってる名前もオラ好きだぞ」
「…っ…悟空…」

間近で見詰められ、思わず瞳を閉じた。
想いが通じて2週間…今までキスの一つもしたことのないあたしたちだったけど。
悟空の両手がそっとあたしの頬を包んだ。
けど…


ガチャッ


「父さん、名前さん、今帰りました!」
「っ…!!?」



ドカッ



ガシャ、ガシャンッ




またしても…あたしのとっさの怪力に吹き飛ぶ悟空。

「…あれ?父さん、何してるんです?」
「いってぇ〜…」
「なっ、何でもないの、悟飯くん!おかえりなさいっ!!」
「え、えぇ、今戻りました…」

状況が飲み込めず呆気に取られている悟飯くんの表情が何とも言えない。
そして…


ごめんね、悟空ッ!!(涙)


…というか、前にもこんなことあったなぁ…
盛大に引き攣り笑いをしながら、あたしはふとそんなことを思った。
ラブラブまでの道のりは…まだ遠いようですっ…