47.焦らず前進。


「はぁっ…はぁっ…」
「頑張れ名前!!もうちょっとだぞ!!!」
「そうだよ名前お姉ちゃん!!ほらっ、あと少し〜」

盛大な応援を受けながら、あたしは頑張った。
そして…

「はぁっ…つ、着いたぁぁぁぁ!!!」
「やったな、すげぇじゃねぇか」
「うん!あたし、頑張ったっ!!」

何度も急な上昇や下降を繰り返しながらの危なっかしい舞空術。
それでも、初めて一度も墜落することなく目的地まで到着。
ハラハラしながら応援してくれていたであろう悟空や悟天くんが次々に賞賛の言葉をかけてくれる。
うぅ…あたし、涙が出そうです、ホントに…

「…貴様ら…人様の家の屋根の上で一体何をやってやがる…?」
「…え?」

ふと顔を上げると、呆れた表情で腕を組んでいるべジータさん。

「あはは、お騒がせしてます」

笑いながら、ペコリと頭を下げた悟飯くんと一緒にあたしも頭を下げた。
無事に着いた先は、西の都。
カプセルコーポレーション。




『見上げれば同じ空。<47>』




「えええぇぇぇ!!!」

広いリビングに大きな悲鳴が響き渡り…あたしはその向かいで思わず苦笑いしてしまった。

「そ、そんなに驚かなくても…」
「ごめんごめん。でも、よかったじゃない」
「…はい」

悟空はべジータさんと重力室へ。
悟天くんはトランクスくんと遊びに行き、悟飯くんも一緒に連れていかれた(笑)
静かになったリビングであたしは意を決して悟空とのことをブルマさんに打ち明けたのです。
あんなに色々と親身になって話を聞いてくれていたブルマさんにいつまでも黙っている…というのも何だしね。

「じゃあ、今は幸せいっぱいな訳だ?」
「は、恥ずかしいですよ、そんな風に言われると…」
「いいじゃないの〜。でも、私はこうなるだろうと思ってたけど、ね」
「え…?」

顔を上げればにっこりと微笑んでいるブルマさん。
そういえば…

「ブルマさん…もしかして気付いてました?あたしの気持ち」
「まぁね。私を誰だと思ってるのよ?」

そうですね…参りました。
今になって思えば、ブルマさんの言葉の節々にはそう思わせるモノが何度もあった。
からかわれたこともあったし…ね。

「……………」

う〜ん…
やっぱり、この世界での最強キャラって…ブルマさんなんじゃ…

「どしたの?急に黙って」
「い、いえっ…別に」

いやいや、そんなこと口が裂けても言えないし!!

「名前だけじゃなく、わかりやすいのよね…孫くんも」
「悟空も、ですか??」
「そうよ〜、孫くん見るからに名前が好きって雰囲気出ていたし」
「…へ?」

あの、悟空が??
まさか〜…と思って、あたしは誤魔化すように笑ったけど…ブルマさんには何故か驚かれてしまった。

「アンタ…ホントに気付いてなかったの?」
「え…何が、ですか?」
「呆れた…私、てっきり孫くんの気持ちには気付いてるのかと思ってたわ。それでも奥手で先に進めないのか、焦らしてるのかな、って」

ブルマさんの言葉に今度はあたしが絶句。

「焦らし…って、そんなこと出来る訳ないじゃないですか…」
「まぁ…それもそうね」

ふぅ、と息を吐いて…ブルマさんはソファに深く座り直した。
そしてまたにっこりと微笑む。

「孫くんね、みんなといてもず〜っと名前のこと見てたのよ。目で追ってる、っていうのかな」
「あの、悟空が…ですか??」
「そう、あの孫くんが。だから皆驚いてたわ…一人の女の子に執着するような素振り、今まで一度も見せたことなかったから」

ブルマさんの言葉にあたしは言葉を失った。
好きで…好きで…
気が付いたらずっと目でその姿を追っていたのは…あたしだけじゃなかったんだ。
それって…

「…それって、すごい…」
「そうよ〜、だから自信持ちなさいね」
「はい…」

ものすごく照れてしまったけど…
それ以上にものすごく嬉しくて…
あたしははにかむように笑った。
その時、部屋に悟天くんが飛び込んでくる。

「名前お姉ちゃん〜」
「悟天くん、どうしたの?」
「兄ちゃんとトランクスくんと鬼ごっこしてるんだ!」
「鬼ごっこって…ダメじゃない、人様の家の中で走り回っちゃ…」

そう言いながら、汗が流れている悟天くんの額をハンカチでそっと拭いてあげた。

「あはは、いいのよ〜、うち広いから」
「はぁ…じゃあ、せめて物を壊したりだけはしないでね」
「うん!!!」

にっこり笑って頷く悟天くん。
自然とその頭を撫でていた時…

「何だか名前、お母さんみたいね〜」
「…なっ!!」

ブルマさんの一言に一気に顔が赤くなる。
そして続け様に…

「そういえば、孫くんとはもうちゃんとヤッたの?」
「ぶっ…!!!?」

あまりに威力抜群の二弾攻撃に思わず吹くあたし。
なっ…なんてことを聞くんですか、ブルマさんっ!!!

「ヤッた?ヤッたって、何を?」
「〜〜〜〜〜ブ、ブルマさんっ!!!」

隣でキョトンと聞き返してくる悟天くんの耳をとっさに両手で塞ぎつつ…
慌ててブルマさんを見るけど、ブルマさんは楽しそうに笑っていた。

「あはは、ごめんごめん。で、どうなの?」
「悟、悟天くんの前で、そんなっ…」
「YESかNOで答えればいいんだもの、簡単じゃない」
「〜〜〜NOですよ、NOっ!!!」

一気にそう言い終えると…また大きな瞳をさらに大きくするブルマさん。
あぁ、神様…(デンデにあらず・笑)
ものすごく、嫌な予感がします…

「う、うそでしょ?まだ、してないの?」
「し、してないですよ…だって、まだあれから2週間しか」
「2週間もあれば十分よ!」
「……………」

いやいやいやいや。
勢いよく立ちあがったブルマさんが…あたしに迫ってくる。
はい、迫力満点です。
その時、トランクスくんと悟飯くんも部屋に入って来たけど、ブルマさんとあたしの様子に状況が飲み込めていないようだった。

「…ママ、どうしたの?」
「トランクスくん、僕もよくわからないんだ…ヤッた、とか2週間がどう、とか」
「悟っ、悟天くん!!!」

何やらしっかり聞いていたらしい悟天くんの口を塞ごうと慌てるあたし。
その時、一瞬室内の風が揺れた。

「よっ」
「っ、悟空っ…」
「どした名前、顔真っ赤になってんぞ」

はっきり言って、タイミングが悪いなんてモンじゃありません。
おそらくべジータさんとの修行を終えて、瞬間移動で現れた悟空。
当然のごとく、ブルマさんの矛先は悟空へ移動…

「ちょっと孫くん、どういうことよ?」
「な、何がだ?」
「わぁぁぁぁ、ブルマさん〜〜!!!」

慌ててブルマさんの口を塞ぎつつ、「何だ?」と聞き出そうとしてくる悟空に「何でもない」と何度も連呼する。
悟空とそういうコトをする…
ダメ…考えただけで、軽く失血死できる…(鼻血による・笑)

「あたしたちには、まだ早いんです!」
「だって、学生同士の恋愛じゃないのよ、アンタたち」
「いいんです!そんなのっ、まだ刺激が強すぎますっ!!!」
「…そ、そう」

小声でそんなやり取りをするあたしとブルマさん。
ブルマさんもあたしの気迫にさすがに負けたらしい…
その後、何だ、何だと寄ってくる悟空、悟天くん、トランクスくんにあたしが大苦戦したのは…言うまでも有りません。

…クスン…