67.一難去って、また一難(微エロ注意)

“おそらく、異世界を超えた影響か何かで、名前さんは通常考え得る以上の身体能力を得てしまっているのでしょう”

チャプ、と静かにお湯が跳ねる。

“どういうことだ?デンデ”
“僕にも推測でしか言えませんが…今の段階ではそれ以外には考えられません”

今日、天界で起こったことを思い出して…あたしは小さくため息をつくと身体をさらにお湯へと深く沈めた。

“時空を超えた影響で何か負荷がかからなければいいのですが…”

「…はぁ…」






『見上げれば同じ空。<67>』






「…負荷、かぁ…」

ぼそっと呟きながら、脱衣所へと出た。
もそもそと着替えをするけど、正直…心ココに在らず。
こっちの世界に来ることであたしにも影響が出ているのかもしれないってデンデくんは言っていた。
推測でしか、デンデくんにもわからないらしいけど…
ただ…

「負荷、って悪い影響のこと…だよね」

鏡に映る自分のことをぼんやりと眺める。
今のところ…特に悪い影響が出ているようには思えない。
まぁ、おかしな力が付いてしまっていることは別として。

“名前さん、何かあったらすぐに言って下さいね。僕で出来ることでしたら力になりますから”

そう言って、デンデくんは笑ってくれた。
正直神様であるデンデくんにそう言ってもらえたことはすごく救いだった。
くよくよしないのだけがあたしの取り柄だもの!
そう自分に言い聞かせたら少し元気になった気がした。
その時。

「あり?」

突然脱衣所の扉が開き、悟空が顔を出す。
そしてあたしの顔を見てキョトンとしていた。

「おめぇ、風呂入ぇってたんか。おら、どこ行っちまったんかと心配したぞ〜」
「あ、うん。ごめ、ん…」

振り向きながら返事をして、あたしはハッとした。
むしろ、驚いたようにあたしのことを見ている悟空の顔を見て…気が付いた。
…あたし、今下着しか付けてないっ!!?

「っ、ぎゃぁぁぁ!!悟空っ、閉めて、閉めて〜〜!!!」
「なっ、何だよ、別にいいじゃねぇか」

とっさに扉を閉めて悟空を脱衣所から押し出そうとしたけど…そんなことが悟空に通用するわけもなくて。
悪びれた様子もなく、再び脱衣所に入ってくる彼。
恥ずかしすぎて、思わず近くにあったバスタオルで露わになっていた身体を隠した。

「何だよ、隠すことねぇだろ?名前の裸なら、おら見たことあるしよ」
「だ、だったら悟空こそそんなまじまじ見なくたっていいじゃない…」
「ん〜、そうだなぁ…」

思わず悟空から距離を置こうと後ろに下がったけど、元々あまり広くない脱衣所の中。
終わりなんてすぐに見える。
あたしが壁に追いつめられる…という形で。
背中をダラダラと冷たい汗が流れるような感覚。

「悟、悟空…」

そんなあたしの心情を知ってか知らずか…
悟空はあたしの頬を両手で包み込むようにして顔を上げさせる。

「名前の下着姿見たら、おらドキドキしちまった」
「悟っ…んっ!」

小さく笑いながらそう言った悟空にそのまま口づけられる。
天界から帰ってきて、夕食が終わると珍しくリビングでうたたねをしていた悟空。
そんな悟空に「やっぱりベジットさんとの全力の組み手は疲れるんだねぇ」なんて思って、起こさないように先にお風呂に入ったあたし。
まさか…それがこんな形で裏目に出るとは思わなかったっ…

「ん…ふっ…」

何度も、何度も角度を変えて与えられる悟空のキス。
だんだん息が苦しくなってきて、息継ぎをしようとわずかに唇を開いた瞬間。
スルリと悟空の舌が入ってきて、びっくりしたあたしは離れようと無意識のうちに悟空の腕を押し返す。

「…んんっ…!」

ただ、今日の悟空はそんなことでは離してくれなくて、逆に後頭部に手を回されてしまったけど。

「っはぁ…」

一体どれくらいそうされていたのか…
ようやく唇が離れて、何とか息を吸い込んだあたしは思わず悟空を見上げ、睨んでしまう。

「悟空、ひどいよっ…あたしが苦しがってるの、わかってたくせに」
「ははっ、悪ぃ悪ぃ。何か止めらんなくてよ」
「………っ!」

困ったように笑う悟空だけど…いつもの彼と違う。
あたしの全神経がそう告げていて。
何か話さないと…そう思った瞬間、今度は首筋に唇を落とされる。
これは…本格的にやばい!!

「悟っ…ダメだってば!悟飯くんや悟天くんだってきっとそろそろっ…」

帰ってくる。
悟空の身体を押し返しながらそう抗議をするあたし。
でも、返ってきたのはあっけらかんとした悟空の言葉だった。

「何だおめぇ、知らなかったんか?今日はうちに泊めるって2人共チチが連れてってんだぞ?」
「…へ?」

首筋から顔を上げ、「言ってなかったか?」なんて聞き返されるけど…聞いてませんよ、そんなの!!

「こんな機会、めったにねぇしよ…な?」
「…ん」

確かに…悟空の言うとおりではある。
いや、その前に何となくチチさんの魂胆が見え隠れしているような気がするのは…あたしの気のせいだろうか…
返答に困って思わず俯くあたしの身体はそのまま悟空に抱き締められた。
そして耳元で囁かれる。

「…おら、おめぇを抱きてぇ」

熱っぽい声で聴神経に直接注がれるかような言葉。
悟空のことが大好き。
もうあたしに拒否の言葉を口にすることは出来なかった。

「じゃ、じゃあ…せめて、明るくないところでにして?」
「何でだ?」
「はっ…恥ずかしいじゃない…」

もごもごと語尾が小さくなりつつも何とか告げる。
頬が赤くなるのを自覚しながら、悟空のことを見上げると嬉しそうに笑っている彼の表情が目に入って…
心臓が大きく鼓動したのを実感した。





そして、今。

「ひゃぁっ…」

寝室のベッドの上…わずかにあたしの身体を覆っていた下着はあっという間に取り払われ…
あたしは自分の腕で何とか胸元を隠している。

「名前、隠すなって」
「あっ…」

その腕も悟空の大きな手で簡単にシーツへと縫い付けられてしまったけど。
今まで思ったことないけど…死ぬほど恥ずかしい、ってこういう気持ちのことを言うのかもしれない。

「…んんっ」

思わず目を瞑って顔を背けるあたし。
でも悟空はすかさず露わになった首筋に再び顔を埋めた。
今まで想像していた悟空と…全然違う。

「名前」
「…え?」
「愛してっぞ」

今まで感じていた少年のような悟空の姿は今微塵もなくて…
あるのはあたしの上で大人の表情を見せている悟空の姿。
そんな表情で見つめられたら、あたしだっておかしくなりそう…
暗い部屋の中…月明かりだけに照らされた悟空の表情に「あたしも…愛してる」と自然と返していた。

「…っあ」

悟空の大きな手があたしの胸元に触れる。
そのまま包み込むように愛撫されて…色んなところにキスをされて…
生理的な涙で瞳まで潤んでくる。
…その時。

「…っ!!?」

鎖骨のあたりにチリ、と痛みを感じたのと、一瞬強烈な光が見えてとっさに目を閉じたけど…
再び目を開けたあたしの視界に飛び込んできたのは信じられない光景。
いや…何故か金色のオーラを纏っている悟空の姿。

「きゃぁぁぁぁっ!!!」
「いっ…!」

あまりの出来事にあたしの腕にも信じられないくらいの力がみなぎってきて、無意識のうちに悟空の身体を押し返す。
そしてひるんだ悟空から距離を取るべく、ものすごい速さでベッドの端まで逃げた。
もちろん、その間に近くにあった毛布で自分の身体を隠すことも忘れない(笑)

「何すんだよ、名前」
「悟空こそっ!何でいきなり超サイヤ人なの!?」
「へ…?」

泣きそうになりながらそう告げるあたしに悟空はキョトンとしながら自分の髪に手を触れる。
どうやら…悟空自身、変身してしまっていることに気が付いていなかったらしい。
何てことだっ!!

「ははっ、悪ぃ悪ぃ。おら、興奮しちまってつい…」
「つい…って」

困ったように髪を掻く悟空に一気に脱力するあたし。
でも、あたしにしてみれば忌々しき問題だ。
だって…これじゃせっかく恥ずかしくないようにって暗い部屋に連れてきてもらったのに、全くの無意味!!

「元に戻ってよ、悟空〜」
「そ、そんな泣きそうな顔しなくたっていいじゃねぇか」
「だってぇ…」

そこは乙女の心情。
わかってくれ、とは言いません…はい。
でも、悟空は困ったように頬を掻く。

「戻るんはいいけどよ…おら、またなっちまうと思うぞ、たぶん」
「…え?何で?」
「名前見てたら自信ねぇよ…可愛いから、つい昂っちまうんだよな」

ははっ、参ぇったなぁ…なんて、悟空は笑っているけど。
あたしにとっては、はっきり言って一大事。
ここにきて、まさかこんな問題が浮上しようとは!!
顔を真っ赤にしたまま悟空のことを見詰め続けるあたしに、彼は少し考える素振りを見せて…

「そうだ、これならどうだ?」

と言いながら器用に金色のオーラだけをフッと消した。

「悟空?」
「おめぇ、明るいんが嫌なんだろ?それならこれで大ぇ丈夫だ」

なっ?と場違いなくらい眩しい笑顔であたしの顔を覗きこむ悟空。
そんな彼がとてつもなく愛おしく感じてしまうくらい…とっくにあたしは悟空に溺れてる。
ゆっくりとシーツの海に沈められながら、頭のどこかでそんなことを考えていた。