69.それぞれの目覚め
※前話が裏ですが、一応裏を読まなくても話がわかるよう書いています。※
「…ん…」
カーテンからうっすらと漏れてくる光にわずかに目を開けた。
いつもは朝早く目が覚めるおらが珍しくよく寝てたんだな…なんて思って、寝返りを打ってからもう少し寝ようと思った。
隣にいる小さな存在を抱き寄せながら…けど。
「あ、あり?」
隣にいるはずの存在…名前はどこにもいなくて、おらは驚きながら上半身を起こす。
訳が分からず、名前が寝ていたはずの隣のシーツを触ってみると…すでに冷たい。
一瞬、嫌な予感が全身を突き抜けて…おら自身びっくりするくれぇ慌てながらベッドから出ようと片足を下ろした。
その時だった。
一瞬鼻を突く良い匂い…それに気が付くとほぼ同時に寝室の扉が開かれた。
『見上げれば同じ空。<69>』
「悟空?起きたの?」
何やらガタン、と音がしたような気がして…
首を傾げながら寝室の扉を開けたあたし。
すると、悟空は何だかすごくびっくりしたような…拍子抜けしたような…何とも言えない顔をして、ポカンとあたしのことを見詰めている。
「ど、どうしたの?」
「名前っ…」
「え?」
そして、だんだんと安心した表情になるとベッドから抜け出て、あたしのほうへと駆け寄ってきた。
…全裸で。
「ぎゃぁぁぁぁっ!!!!」
朝からのあまりの衝撃に勢いよく扉を閉めるあたし。
「なっ、何だよ名前〜!」
「パンツ!とりあえず、パンツ履いてよぉぉぉ!!!」
どんどんと叩かれる扉を全力で押さえつつ…とりあえず叫んだ。
なのに、悟空ときたら…
「何だ、そんなことか〜。別にもういいじゃねぇか、昨日見」
「見てないもん!恥ずかしいっ!!」
「何だよ〜、女って変わってんなぁ」
「いいからっ!とりあえずパンツを履いて、悟空」
さすがの悟空も乙女の迫力に負けたのか、「わかったよ」と扉から離れていく気配。
一方のあたしは何だかどっと疲れて、思わず近くの椅子に腰かけた。
何が悲しくて、朝からパンツがどうのと揉めなければならないのか。
でも…
「ふふっ」
次の瞬間には、また笑ってしまう。
何だかね、あまりにもあたしたちらしいなぁって思って。
1人にやける顔をもてあましていると悟空が寝室から出てきた。
今度はちゃんと道着まで着て。
「…えっ?」
そして無言のまま、あたしに歩み寄って…何故かそのまま抱き締められてしまうあたしの身体。
…え?何で?どうして??
「ど、うしたの?」
思わず悟空の背中をポンポンと叩きながらそう聞き返す。
悟空はゆっくりと顔を上げて、あたしの頬にそっと触れた。
「急にいなくなったら…焦るじゃねぇか」
「え…?あたし、どこにも行ってないよ?」
「そうじゃねぇ。朝起きて、いきなり隣に名前がいなかったから、おらびっくりしちまった」
「……………」
びっくりするのは、あたしのほう。
悟空がこんなことを言うなんて…
こんなことで、焦ったり、不安に思ったりするなんて…
「ごめん…朝ご飯、作ってたの」
「あぁ、どうりで良い匂いがすると思ってたんだ」
納得しながら身体を離す悟空にニコニコと笑顔を見せながら…
あたしは心の中でこっそりともう一度悟空に「ごめんね」と謝った。
悟空とついに結ばれた昨日の夜。
とっても幸せで…暖かくて…何もかもが夢のようだった。
でもね…意識していたのか、普段とは比べ物にならないくらい早く目が覚めてしまった今日の朝。
恥ずかしさに耐えられなくて、悟空を起こさないように先にベッドを出たのは…事実であり、確信的だったもの。
「あ〜ぁ、しっかし残念だったなぁ」
「ん?何が?」
食卓に着きながらそう言う悟空に聞き返せばあっけらかんと一言。
「おら、寝てる名前のほっぺにちゅ〜くらいしたかったぞ」
「……………」
思わず無言になってしまう。
だって…あたしは起こさないようにしちゃったもんね、寝ている悟空のほっぺにちゅー。
同じことを考えていたことにも何だか1人笑ってしまって…
「何だ?名前」
「ん、何でもない」
何もかもが幸せ。
目が覚めれば、いつもと同じ朝が来ると思っていたけど、この日の朝はいつもとは全然違って見えた。
「ん〜、名前結構元気だよな」
「え?うん、元気だよ?」
「…おら、無理させねぇようにって手加減しすぎたんかもなぁ…」
「…はい?」
そんな、悟空の不穏な一言は綺麗に聞き流して!!
今日もパオズ山に日が昇る。