70.ナイス提案!!



いつも招待されてばかりじゃ悪いもの…ね。





『見上げれば同じ空。<70>』





「名前さん、そっちどうですか?」
「うん、もう少し煮込めば良い感じになりそう」
「そうですか、間に合いそうですね」

そんな言葉を交わしながらにっこりと微笑むあたしたち。
その日、孫家のキッチンには朝から良い匂いが漂っていた。
キッチンに立ち、さながら戦場でもあるかのようにドタバタと動いていたあたしと悟飯くんだったけど、どうやらお互いにひと段落ついたようでホッと肩の力が抜けていく。

「ふふっ、どうぞ」
「えっ?あぁ、ありがとう」

近くにあった椅子に腰をかけたその時、目の前にスッとコーヒーの入ったカップを差し出されて…
びっくりして見上げると優しく微笑んでいる悟飯くん。
お礼を言ってカップを受け取ると、両手いっぱいに暖かさが広がっていく。

「ん〜、美味しい」
「それはよかったです」

悟飯くんも笑いながら向かいの席へと座った。

「ありがとうね、悟飯くん。助かっちゃった」
「いいえ。もっと早く言ってくれてもよかったくらいですよ」

これだけの量を1人で、なんて大変です…と続ける悟飯くん。
正直、その通りだったと思う。
言い返す言葉も見付からないあたしは「ははっ、ホントそうだね」とだけ返しておいた。

「それにしても、さすが名前さんですね」
「何が?」
「今回のパーティーのことですよ。ブルマさんのところにお呼ばれすることはあっても、こちらに招待するなんて今までなかったですから」
「あははっ、かえって迷惑になってないといいんだけど」
「そんなことないです。ブルマさんたちだってすごく喜んでいたでしょう?」

その言葉にふと思い出した。
「名前〜、最高じゃないそれ!みんなにも声かけて、一緒に連れてくわ」と受話器越しに聞こえてきたブルマさんの明るい声。
そうなのです。
いつもブルマさんに声をかけてもらって、カプセルコーポレーションにお呼ばれしていたんだけど、いつもじゃ申し訳ないなって思って…
今回はココ、パオズ山にみんなを招いちゃおうと提案してみたのです!
今の季節はパオズ山も天気の良い日が多いし、庭でなら簡単な立食パーティー形式で出来るんじゃないかなって。
嬉しいことに、悟空も、悟飯くんも、悟天くんも大賛成してくれて…まさに、今日がその日なのです。

大量の料理も悟飯くんが手伝ってくれて、何とか間に合いそう。
勉強の邪魔をしちゃいけない…と何とか1人で作ろうと奮闘していたら逆に悟飯くんにちょっぴり怒られてしまった。
「僕のことも、もっと頼って下さいよ」…ってね。

「みんな来るかな?」
「ええ、ブルマさんが迎えに行って一緒に来るって行ってましたから…きっと大人数になるでしょうね」
「そっか、楽しみだなぁ」

グツグツと煮え立ってきた鍋の中を一度覗きこんで、もう一度椅子に腰かけるあたし。
窓の外を眺めながらコーヒーカップに口を付けている悟飯くんの横顔を見て、ふと思いついた。

「そういえば、ビーデルさんにも声かけたの?」
「あ、はい。学校で会った時に一応」
「わぁ、喜んでたでしょ!」
「え、えぇ」

ズイ、とテーブルに身を乗り出すあたしに悟飯くんは圧倒され気味に頷いた。
うんうん、そうだよね。
ビーデルさん、悟飯くんのこと好きだもんね…誘われたら嬉しいよね!
自分のことは棚に上げて、ビーデルさんの恋の応援はとっても楽しい!
この時ばかりは、悟空とあたしのことであれこれと手回しをするブルマさんの気持ちまで何となくわかってしまう。

「そっかそっか」
「あはは…」

にこにこしているあたしに一瞬困ったように微笑んだ悟飯くん。
その彼に突然話を切り返されたからびっくりした。

「名前さんと父さんも、相変わらず仲が良いですよね」
「え?」

仲が良い…
そりゃあ喧嘩なんてしないし、家にいてもだいたい悟空の近くにいることが多い。
悟空がさり気なく寄ってくるからっていうのもあるんだけど…

「うん、まぁ基本喧嘩とかしないしね」

そう曖昧に返事をすると、悟飯くんは一瞬「え?」という表情をして…
その後、また困ったように笑って髪を掻いた。

「そういう意味じゃなかったんだけどな…」
「…え、何が?」
「いいえ、何でもないです」

首を傾げるあたしのことを悟飯くんは正面から見詰めてきて…そして、また視線を窓の外へと向ける。
この時、悟飯くんが小さく何かを呟いたような気がしたけど、あたしには言葉の内容までは聞こえなかった。
だから、知らなかった。

「本格的に先を越されちゃったな…父さんに」

…と、小さく呟やかれていたなんて…この時は、知らなかった。






その後、食材を探しにパオズの山奥に入っていた悟空が帰ってきた。

「これ、丸焼きにしようぜ〜」

と言いながら、これまた巨大な魚を掲げながら舞空術で降り立ったその姿にあたしは絶句。
さらに…

「名前お姉ちゃ〜ん、恐竜さん捕まえてきたよ〜」

と言いながら帰ってきた悟天くん。
その肩にはでっかい尻尾が担がれていて、もちろんその尻尾にはでっかい本体まで付いている。

「…いやいやいやいや…」

これはダメでしょう、悟天くん。
大きすぎるし、何より尻尾を担がれている恐竜が瞳をウルウルさせながらこっち見てるし…

「悟天くん…これは大きすぎるから、逃がしてあげよう?」
「え〜…」

本当に食材として捕まえてきたのか…それとも遊び相手のつもりだったのか…
悟天くんの真意も今となってはどちらでも良い。
とにかく!この場にこんな大きな恐竜はダメだ!!

「ちぇ〜…」

悟天くんはむくれた顔をしながらも聞きわけが良くて…すぐに恐竜の尻尾を離す。
すると恐竜はクルリ、と身体の向きを変えて、こちらを正面に見据えてきた。

「…あれ?」

もしかして、怒ってる!?
やばい、と思った次の瞬間。
身構えるあたしの身体に恐竜は屈みながらその大きな顔を近付けてきて…


スリ…


「へ…?」

あたしの身体に大きな頬を優しく擦り付けるとそのまま向きを変え、山奥へと再び帰っていった。
茫然としているあたしの耳に、ドシンドシン、という足音が遠ざかっていくのが聞こえる。

「ははっ、おめぇ懐かれちまったんじゃねぇか?」
「はい…?」

頭上から聞こえたのはそんな悟空の声。
恐竜が帰って行った山の方角を見て…あたしは思ってしまった。
この世界に来てから…やっぱりあたしには、空前のモテ期が到来している!!!







『ネタ希望アンケートより頂きました。ありがとうございました!』

“悟飯と一緒に料理”
いただいたコメントは以下です。

○涼さま:
悟飯くんとほのぼのお料理…想像だけでご飯3杯は軽いです!(寒いシャレすいません;) 後ろで悟空と悟天が構って欲しそうにしてたら可愛い…(笑)

○スイさま:
悟飯が好きなので…(∀)

○レイナさま:
よろしく

○匿名さま:
悟飯ちゃんとなごなごクッキング(*´ω`*)

○優羅さま:
悟飯最高

その他、投票だけの方々もありがとうございました!!