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安全運転って大事なんだな、名前がそう思ったのは崖から落ちる寸前のことだった。

「あ、あぁああぁ、あーっ!」

待ってよ、まだ何もしてないよ。ただツーリングに来ていただけなのに。大きなカーブなんていつもは余裕なのに。
対向車が猛スピードで来なければ。白線を超えていなければ。壊れていたガードレールが昨日までに補修されていたならば。
なんで。なんで私は今まさに落ちているのだろう。あぁ、死ぬんだな。痛そうだな。

そういえば会社の飲み会明日じゃん。あぁ、神様どうか五体満足で生還出来ますように。

そう願いながら名前はバイクと共に崖から真っ逆さまに落ちていくのだった。