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バイク事故から数週間がたった。
病院で目覚めた時は相当驚いてしまったが、今やこの世界に慣れつつある。
身分を証明するものもなければ、バイクやヘルメットも一緒に消えてしまった。
自分が起こしたバイク事故は自動車と歩行者の交通事故で片付けられていた。
住所もでたらめ、電話もどの番号にも繋がらなくなっていて、居場所が無くなっていた。
この状態を推理した名前は、パラレルワールドに来てしまったのではないかと結論づけた。

警察が介入して行方不明者リストや犯歴者リストを洗い出したが、名前は見つからなかったのだ。
数日間は身分がなくても受けられる保護を僅かながら受けて、施設に篭っていたが、いつまでもそうしている訳にはいかないと施設を飛び出し、寮がある職場へと潜り込んだ。

簡単に言うとキャバクラだった。
戸籍がなくても住まいと職を与えてくれる。今の名前にはうってつけだった。
水商売に欠かせない連絡手段、携帯電話は店長が仕事用のものを貸し出してくれた。
その携帯電話で名前は今日も客と連絡を取る。