モノローグ
――夏が来ると、あの人のことを思い出す。
17歳の夏。握り返した大きな手のこと、遠い空の向こうで鳴く蝉の声、花火大会のこと。告白した旧校舎の古びた土埃の匂い、生まれて初めてした口づけのこと、あの人が去った夏の夕暮れのこと。
丘に登ると、住んでいる街を一望することができる。
あの人との最後の別れとなったこの丘に登って目を瞑ると、時間が九年前に巻き戻っていくようだった。
夏の稜線
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