着飾った私を見てね

この話は劇場版僕のヒーローアカデミアのネタバレを含みます。ご注意ください。






ヤオモモの余った招待券を賭けたジャンケンにを勝ち残り、私はヤオモモとお茶子ちゃんと響香ちゃんと一緒にI・アイランドに向かった。当たり前のようの貸し切り飛行機で移動したけど、これが所謂プライベートジェットって奴なんだろうか?ヤオモモのお家はお金持ちだって知ってたけど私の想像を絶するお金持ち加減で思わずヒーロースーツが入っているケースを地面に落としてしまったのは彼には内緒だ。

ヒーロースーツに着替え、施設内見学をしている途中デクくんとここの大学生のメリッサさんと偶然会って、メリッサさんに施設内を案内してもらっている時に敵(ヴィラン)アタックに挑戦していたかっちゃん達と出会した。

「あれ?!かっちゃん何でここに?!」
「あぁ?テメェこそ何でここにいんだよ!」
「私はヤオモモのお零れを勝ち取って…って14秒?流石かっちゃんだね」

ロボットヴィランをたったの14秒で倒してしまうなんて流石かっちゃんだ!と賛美の声をかけるといつものすまし顔で 鼻で笑った。
こんなの出来て当たり前だ。とでも言いたげな態度にやっぱりこの人は凄いと感じる。

だって、初見で何体のロボットヴィランがどこにいるかも分からないで的確に無力化していくなんて1分は絶対にかからないにしろ、15秒を切るスピードでは絶対に私は出来ない。
広い視野に観察力、的確な攻撃を判断するキレの良さ。何よりそれらの能力を高める為の並外れた集中力に思考についてこれる身体能力。

やっぱりかっちゃんは私の1番身近な憧れの存在で大好きなヒーローだ。

その後色々とあったが、私達はレセプションパーティに参加する準備をする為に1度部屋に戻り、ドレスコードに着替えロビーで待ち合わせすることになった。私のドレスコードはヤオモモに借りれることになったのでそれを着ると意外と肌の露出があって恥ずかしいが何かと毎日鍛えているこの体は、まぁ人に見せられなくはない体型だろう。流石にヤオモモみたいに胸が大きいわけじゃないからそこは残念なわけだけど。

「名前さんお似合いですわ!」
「うん!すっごい可愛いよ」
「アンタそういう服装も似合うんだね」

3人からお褒めの言葉を頂き調子に乗った私はかっちゃんにも見てもらおうと、宿泊している部屋を飛び出してかっちゃんの泊っている部屋に向かった。絨毯が隙間なく敷かれた柔らかい廊下を足取り軽くかっちゃんの部屋まで行き、扉をノックすると何故か切島くんが出てきた。

「あれ?この部屋ってかっちゃんじゃなかった?」
「そうだぜ!俺と爆豪と同室なんだよ!」
「なんで?!羨ましい…」

彼女の私じゃなくてなんで切島くんが同室なんだと苦情を入れたいが、私はヤオモモのお零れをもらった人間だし今更言ったところで部屋割りが変わるわけじゃないから何も言わないまま、かっちゃんたちの部屋に入る。
すると、部屋着でベッドに横たわっているかっちゃんをすぐに見つけた。

「かっちゃんもう着替えないと時間がないよ!」
「俺はンなくだらねぇパーティには行かねェ」
「招待されたんでしょーが」

俺は行かねぇと駄々を捏ねるかっちゃんを無理矢理起こして切島くんと協力してなんとかドレスコードに着替えさせた。勿論私は起こすのを手伝っただけで生着替えは見てはいない。かっちゃんの生着替えをこの目で見れるのかと期待したけどかっちゃんがそれを拒否したから見ることは叶わなかった。

「んじゃ行くか!!」
「飯田くんとの待ち合わせ時間過ぎてるから急がないとだね!」
「面倒くせぇ…」

私がスマホを部屋の中に置いてきちゃったから飯田くんに電話できないし…と言ったらかっちゃんが切島くんに向かって挑発するように顎を上に向かって数回微動させた。それでかっちゃんの伝えたい意味が分かったのか切島くんが閃いたような笑顔を浮かべてポケットの中に手を突っ込む。

「電話かければいいんだろ!……あれ?やっべー俺の部屋に忘れちまったぜ!」
「クソ髪がァ!!!」
「かっちゃんは?」

気持ちいいほどの笑顔を浮かべて親指を謝る切島くんに苦笑いを思わず浮かべてしまった。
そんな思いっきり忘れましたって宣言されたらもう何も言えなくなる。というか私も忘れた身だから強くは言えない。だからかっちゃんにスマホをあるかを聞くと、かっちゃんは無言で切島くんに向かって何かを投げ、切島くんは手の中に収まったそれを見て驚いたような顔をした。

「お前持ってるなら言えよなー」
「いいから掛けろや!」
「おう!」

いや、かっちゃんのスマホなんだから自分で掛けたらいいのに。なんて思いながら何歩か先に歩く切島くんの背中を見ているとふわりとかっちゃんの香りがし、その瞬間腰にかっちゃんの手が回り引き寄せられる。

「あんま俺の傍から離れんじゃねぇぞ」
「ひゃっ…!」
「肌見せすぎだ。なんか一枚羽織れや」
「待って…耳元で、」

切島くんに聞かれないようにって配慮何だろうけど、耳元で囁かれれば身体が自然と反応してしまうわけで、肩が何度か跳ねる。その私の反応すら楽しんでいるんだろうかっちゃんが鼻で笑って普段言ってくれないような誉め言葉まで言ってくれる。

「似合ってる」
「あ、の…」
「んな顔すンなや」
「かっちゃ…んっ」

一瞬本当に一瞬だけ触れ合った唇から心臓に向かって甘い痺れを送る。心臓が忙しなく早鐘を打って体温が一気に上がる。睨みつけるように私の腰を支えているかっちゃんを見上げると、彼はニヤリと笑ってまた私の耳元に顔を近づけた。

「襲っちまうぞ」
「…っ」

なんでこんな時にこんな事を言ってくるんだろうか、この男は。

切島くんが残念そうな顔をして後ろにいる私達の方に振り返った。その瞬間腰に回っていたかっちゃんの手が離れる。でもそれに構っていられない程に私の心臓が未だに忙しなく動く。

「ワリィ!飯田に繋がんねぇ…って苗字なんで顔赤いんだ?」
「何でもないよ!!」
「風邪か?」
「大丈夫!」

まさかこの後に起こる大事件に巻き込まれるなんて思いもしなかった。

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