I・アイランドの情報が載っている冊子を片手に色んな施設を回っていると、何人かの人に声をかけられた。この戦闘服(コスチューム)の所為で本当のメイドさんと間違われたり、私を知っている人がいて声をかけられたり。と、中々ゆっくり施設内の研究成果や作品を見ることが出来ず、僅かに気落ちをしたが焦凍くんは特に気にしていないようで平然とした顔をしていた。
「ごめんね。ゆっくり出来なくて」
「いや……俺の中じゃ柚華さんは当たり前に存在してるけど、そうじゃねェ奴もいるってことだよな」
「ありがとう。でもやっぱりごめんね」
「それに話しかけられんのはよくあるからな。応援されてんのかは、わかんねェけど」
それ、普通にナンパされているだけでは……?と言うことは出来なかった。
というか、やっぱり焦凍くんてモテるんだ。そりゃモテるよね。声だってかけたくなるよね。
だからこれだけ足止めされていても、慣れているから苛立つこともないのか。なんて納得して、そっか。と言葉を漏らすとするりと手を繋がれた。暖かくて大きな手が私の手を包むように握られる。デートをしているみたいで気落ちしていた気分が上がり、自然と笑みが零れた。
「ふふ、デートみたい」
「みたいじゃなくて、デートだろ」
「……そうだね」
焦凍くんは何ともないような顔をして、デートだと言い切った。戦闘服を身に纏って手を繋いでデートする。日本じゃ出来ない経験が出来ることに嬉しくてつい笑みが深くなる。将来2人がヒーローになったら絶対に出来ないデートだろう。それが今経験出来るのだから喜ばないわけがない。
「嬉しい」
道中歩いていると、女の人の黄色い声が聞こえて来て、何か催し物がやっているのかと近づくと、1人の人が人工的に作られた土の山の前に立っていて、その近くに立っている女の人が、敵(ヴィラン)アタックスタート!!と声を張り上げた。ゲーム内容を見るに何秒で土の山の中にいる敵(ヴィラン)ロボットを破壊出来るかというものなんだろう。
「面白そうだね」
「やってみるか」
「うん!」
何処かに受付会場があるのかと周りを見渡すと、受付会場のようなものがあり、書類に名前を書いていると何かが壊れる音が聞こえた。大きなモニターがありそれを見るとヒーローが映し出されていて、マイク越しに女の人の声が響いた。
「タイムは17秒!暫定4位です!!」
20秒切っているのに4位なんだ……。
1位の人はどれだけ速いのだろうか。と会場に続く地下道を歩き廊下のベンチに座って待つように言われ、その誘導通りに並んで座ってまっていると、今度は断続的な爆発音が聞こえていた。
「爆豪くんみたいな個性なのかな?」
「案外本人かもな」
「だったら凄いね!」
その後も断続的な爆発音が聞こえ、遂に私の番がやって来た。誘導灯に従って出口を目指すと、アナウンスの女の人の声が会場を盛り上げるようにマイクを通して響き渡る。
「敵(ヴィラン)アタック、レディゴー!!」
そのスタートを切られると同時に私は首にぶら下げた鍵を取り出し呪文を唱えた。
「光の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ。契約の元柚華が命じる。封印解除(レリーズ)!」
鍵は手の中で回転し光を放ちながら杖に形を変えていく。ポケットから“矢(アロー)”のカードを出して空に投げ、杖を通して魔力を送りカードの能力を発動させると、カードのから弓矢を持った女の子が出てきて、岩の上に設置されている仮想敵(ヴィラン)に向かって矢を放つ。最初1本の矢だったものが複数に分れ仮想敵(ヴィラン)に当たる頃には数えきれないものになっていた。
「“跳(ジャンプ)”!“剣(ソード)”!」
岩の裏側にいる敵(ヴィラン)は“矢(アロー)”では倒せないから、“矢(アロー)”を発動させると同時に走り出し足に力を入れて高く飛び上がり、岩の後ろに回りレイピアに変わった杖で岩陰にいた仮想敵(ヴィラン)を無力化させ、もう1度高く飛び上がりスタート地点に戻ると、アナウンスの女性が興奮したように跳ね上がりながら私のタイムを告げた。
「凄い!凄い凄い!!タイムは15秒で1位タイです!!」
「惜しいなー……」
1位を狙っていたわけじゃないけど、つい言葉が零れた。
次は焦凍くんか、と彼の邪魔にならないところに移動していると何処からか爆発音が聞こえ、顔を上げるよりも先に誰かに腕を引かれた。
「なんでテメェが此処にいるんだ!!」
「あれ?爆豪くんも来てたんだ!じゃあさっきのは爆豪くんの個性だったんだね」
「うるせェ!!質問に答えろ!この花畑女!!」
なんだそのあだ名は。頭の中がお花畑とでも言いたいのか。
少しイラっとして仕返しついでに爆豪くんの質問に答えないでいると、アナウンスの女性の黄色い声が会場に響き渡った。爆豪くんの肩越しに状況を見ると、焦凍くんが右の氷でいつかの体育祭の時に見せたような大氷壁を作り、一瞬にして仮想敵(ヴィラン)を無力化していた。
「タイムは14秒!トップに踊りでました!」
「やっぱテメェも来てたのかこの半分野郎!」
「お、爆豪も来てたのか」
私の腕を掴んでいた筈の爆豪くんは、いつの間にか焦凍くんのところに行き睨みつけている。が、焦凍くんは睨まれていても気にしていないのか、観覧席の方に視線を向け、緑谷たちも来てんのか。と話しかけていた。私も観覧席にいるお茶子ちゃんや百ちゃんに響香ちゃんに手を振った。
「柚華ちゃーん!」
「今そっちに行くね!」
暴れ出した爆豪くんを止める為に観覧席から降りてきた、緑谷くんたちとは入れ違いの形で、私は“跳(ジャンプ)”で一気に観覧席までジャンプした。すると眼鏡をかけた私よりも年上であろう知らない女の子が目を輝かせて私のことを見ている。何でそんな視線を寄こされているのかがわからなくて、首を傾げると女の子は私に近付き色んな角度から私を観察し始めた。
「えっと……」
「あ、ごめんなさい。貴方の個性がどんなものなのか知りたくて」
「あぁ、成程」
このI・アイランドに来てからファンだと言ってくれる人に話かけられていたから、彼女もそうなのかと思ったが、そうではないようで、変に話しかけなくてよかった。と胸を撫でおろした。
私は無個性で、魔力を持って個性を持っている人と渡り合っているが、それを私を観察する彼女に言ったところで理解してくれるかがわからない。出来るなら言わないでおきたいが……。
「私メリッサ・シールドって言うの!よろしくね」
「私は佐倉 柚華。こちらこそよろしくね」
握手を交わすと、私たちの話が終わるのを待っていたのか、お茶子ちゃんが笑顔で話しかけてきた。
「柚華ちゃんも来てたんやね!」
「轟さんも一緒なんですのね」
「焦凍くんはエンデヴァーさんの名代で、私は同伴者だよ」
その後もメリッサさん含め女の子同士で話し合っていたが、焦凍くんが私の名前を呼んだことでお喋りの時間は終わり、私と焦凍くんは日本では出来ない、戦闘服を着たデートを楽しんだ。
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