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俺がその上司を気になり始めたのはつい最近。

上司の名前は稲葉 健人(いなば けんと)。41歳で俺より5歳年上だ。スラリと背が高く落ち着いた雰囲気で年の割りに老けては見えない。質の良いスーツをきっちりと着込んでいる姿からは隙がない気難しい印象をうける。

上司とはいっても職場が同じというだけで普段はお互い別行動が多くほとんど接点がない。たまにあるミーティングや会議で顔を合わせるか喫煙所ですれ違って仕事について話す程度だ。社員の噂だと独身で彼女もいないという。あの歳で独身となると、相当なワケありか。

そんな俺は加茂谷 亮(かもや りょう)。38歳で彼と同じく独身。他人のことをとやかく言えない。周りからは結婚の心配をされることも多いが、あまり乗り気にはなれない。なぜなら俺は男しか愛せないからだ。つまりゲイ。気軽には結婚出来ないワケありだ。

ここ数年は特定のパートナーもいない。ネットで見つけた手頃な相手と適当に遊んで終わり。我ながら虚しいことやったんなって自覚はあるが、こればかりは仕方ない。仕事が終わった週末はネットで相手を探すのが俺の唯一の楽しみだった。

そんな俺が上司を気になり始めたきっかけはネットで彼の書き込みを見つけてしまったからだ。俺の好みは年上の男。それもマゾの。こんなマニアックな相手を探すのはネットしかない。俺は掲示板で住所の近い相手を検索しプロフィールを確認する。気になった相手が写真を添付していた為、なにげなく開いてみるとそこに写っていたのは間違いなく会社の上司だった。


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