漆が真選組で働き出してから暫くのことであった。
どうやら局長である近藤さんが惚れた女にうつつを抜かしているらしい。
正直組の頭としてどうなのかと思ったが、漆も男だ。男の性と言うものに理解できないわけではない。決してお世話になっている身で何かしら言って追い出されたら困るとかは思ってはいない。漆は大人しくいつもの業務に励むのであった。

「退さん、今日の晩飯は何がいいですか?」

漆の業務は掃除、洗濯といった家事のような雑務から山崎の手伝いといったものまで幅広い。
これは山崎が漆がどこから来たか等を隠しつつも近藤や土方に口利きしてくれたからであった。
漆は特に気にしてはいなかったのだが、場合が場合である。
天人ならばまだしも、まさか戦国時代からきましたと言って誰が信じようか…
どんなに説明したところで二人揃って病院送りにされるのがオチである。
結局山崎の昔住んでいた所の近所に住んでいた弟分ということにしたのであった。


「それよりも漆君、みてくれよこのフォーム!!」

山崎は相変わらず任務がない時はミントンをしている。

「わーすごいですね。さすが退さん。すごいです。」
「全然心がこもってないよ!」
「退さん、早くしないと晩飯作れなくて俺が追い出されます。」

そう漆が言うと、ごめんごめんと普段の山崎に戻った。

漆が穏やかな時間を過ごせるのは山崎のおかげである。
漆は晩飯は何がいいかを悩んでいる山崎を見て少しだけ笑った。