UN-HAPPY SHOW!!


ストレイドッグに…


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 血生臭い裏社会。
 昔から貿易港として盛んなヨコハマがその道を辿るのは必然なものだったように思える。
 私たちの生きる社会は警察が度肝を抜かれる違法取引なんて佳くあることでそれは活動のうちの一部だ。今日私がした仕事は裏切り者の始末。ソイツは私が信頼した部下の一人だった。
 太宰さんみたいに人を見抜く目は持っておらず、織田作さんのような寛容な心を持っているわけでもない。安吾さんのような忍耐力と綿密さもない。
 幹部ではないもののそこそこの力は持たされていて、自分の部隊の指図をする権限がある。私の部隊は厄介払いになった構成員が集まる場所。此処で良い成果をあげれば認めてもらえる。逆に云えば此処でヘマをすれば一生が終わる。最後の受け皿。
 まぁ、此処に配属されれば進む道は死しか残されていないようなものだ。幹部たちの見極めに狂いはない。幹部がそうと云ったらそうなのだ。
 いつもの店のドアを開ければそこには見慣れた姿がすでに揃っていた。
「#あだ名#。今日は遅かったじゃないか」
「ごめんなさい。掃除の後始末をしてたら時間が掛かっちゃっいました」
「またぁ? 本当、懲りないよね。バレないとでも思っているのかな」
「裏切り者なんて所詮そんなものですよ」
 「マスター、いつもの」とカウンター席に座る。安吾さんの顔を見ると酷くやつれていて、また太宰さんの狂言に織田作さんがツッコまなかったんだと思うと苦笑いしか零れてこないし、なんと声を掛ければ善いのか分からない。
 安吾さんは今日は車で来たみたいで赤々しいトマトジュースの入ったグラスが置かれている。ずっと思ってるけど、なんでトマト? リコピン欲しいの?
 私の前にグラスが置かれた。いつも通りウーロン茶。
 お酒に弱いわけではない。寧ろ強い方だ。只、何となく外でお酒を飲まないようにしている。お酒を飲んでみんなの話を聞き逃すなんてしたくないから。隣の未成年、太宰さんはアルコール飲料を飲んでいる。裏社会には表の法律など有って無いようなものだけれど矢張り云い知れぬ違和感がある。
 今日もいつも通り近況報告から始まる私たちの会合は誰かが帰るまでずっと続く。
「ずっとこのままが好いなぁ」なんて。
「そうだね」
「……私何か言いました?」
「ずっとこのままが好いって云ってたよ」
 いつもなら否定するこの言葉も今日くらいは良いかと思って、「私はこのままが好いです」と正直に吐露すれば、太宰は何故か心臓辺りを掴んで椅子でくるくると回り始めた。佳く分からなくて織田作さんと安吾さんを見ると、織田作さんはいつも通りの表情をしていたけど、安吾さんは石像のように固まっていた。
 変なことだっただろうか。
「なんでこんなに可愛いの」
「太宰君、心の声が漏れています。とても分かりますが」
「安吾も漏れてるぞ」
「今日はもう解散しよう! うん、それが良い! 私が無理。」


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