記 念


____オーム。

人々は彼を奇術師と呼ぶ。
彼はあの世界で、悲劇の縮図を見せたかったのかもしれない。
その正体を自らが作り出した理想卿という闇の中で潜ませながら。

無作為に出された街中の路地から、2人は表通りに出て安堵感に浸っていた。
そして歩みながら、辺りの景色を確かめるように、懐かしむように眺めた。

《そうだ ここが自分達の生きる世界なんだ………。》

ゴンは、ポケットからあるものを取り出した。

キルア「あれ、お前そんなのどうして……」

ゴン「きっと記念品だよ」

ゴンはしゃぎながらキルアの前に出た。

ゴン「ねぇ、ここ出る前にオームさんに会いに行こうよ!」

そう言って、返事も待たずに先導してゆく。
キルアはやれやれとため息まじりに、後を追った。
しかし、2人が時計屋を見つけることはなかった。
暫く時計屋の付近にあった見覚えのある家で行き場を失っていた。
通りすがる人々に手当たり次第に問うてみるが、それらしきものはこの街には存在していないという。時計屋も、オームも、無き者になっていたのだ。

ゴン「そんな……一体どうなってるんだよ!まさか夢?幻覚?」

キルア「………なぁ、ゴン。あれは夢なんかじゃないぜ。
それに、例えこの世界にオームの存在が無かったらなんだよ。
オレたちが忘れなければ それでいいんだ 」

ゴン「そうだね。あんな体験死んでも絶対忘れるもんか!」

ゴンは歯切れよく言って、微笑んだ。
とうとう2人は、オームに会うことなくその街を後にしたのだった。


______

農夫の男が、畑に向かう通り沿いである男を見かけた。片手に絵筆を持つ男の前には三脚には画用紙が置かれている。

「ヨセフ、今日は珍しく外で描いてるのか?」


ヨセフ「ああ。綺麗だろう?」


「こりゃ、たまげた。見たこともない景色だ」

画用紙には、彩溢れる風景が描かれていた。
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