“僕はね、オームがこの世にいた最後の姿なんだよ”
ゴン「どうゆう意味?」
飢餓の少年は、オームの生前の身体や意思がそっくりそのままの状態で残り、理想卿で意思を持ったまま生きているのだという。いや、生きているという表現はどうも当てはまらない。何せ、ここは現世を離れた死人がいる世界だということなのだ。死の世界で生きている、それが相応しいかもしれない。
その死人が生きせし死世界で、まだ命ある2人が共存していたのだ。
意思が残されているとするならば、この少年、オームは死を直前にしながらその事実に怯えるでも無く、死の存在を認め、悟るほどの器をこの時点で既に持っていたのだ。
極地の精神__
オームの死に至るまでの永き地獄と、この死ぬことの出来ぬ空間を重ねた。
キルアは長い間この状態と接することで麻痺し、このオームの成れの果てとなるのではないか。という事をもっとも恐れた。
ゴン「君はこの世界を創った“調律者“なんだよね。時間を動かすことだって、出来るんじゃないの?」
“うん、確かに時間には深い繋がりがあるし、親密な関係なのは間違えない。だけど…………”
少年は深く俯いた。顔が完全に見えなくなる。
舞い上がる花吹雪の中、鮮やかな虹源の上に佇む、さながら、死神のごとき少年が花弁を捕らえる。
その仕草の一つ一つが気味悪い。人間らしからぬ形相に、身を萎縮させる2人。
やがてオームは方角のない、何処かを指差す。
ゴン「穴!?」
2人は指差す方を向いた。そこにはグルグルと渦巻く風穴がある。
“僕は出ることはできないが、吸い込まれた者を出さないとは言ってない。
一つだけ、お願いを聞いてくれるなら出してあげよう”
ゴン「内容次第だ。悪に係ることならやらない、例え一生出れなくても」
キルア(おいおい……冗談じゃないぜ)
“この世界はとても美しいだろう。
オームは虹色の空を仰いだ。その拍子で、布が落ちる。隠れていた右反面が露出し、浮き出た目は美しいブルーに輝いていた。
ゴン「……うん」
“試行錯誤を繰り返し、無駄なものは全て淘汰したんだ。人の目に焼き付けられるように。本来あるべき姿であるように”
“だが人の頭は、無情にも忘れるように出来ている。大切だった人さえも……死ねばこの花弁の一つのように記憶の隅に追いやられる。いつだって“我々“は多くの事物の一つに変わりないんだ。
だから僕の願いはたった一つ。”
オームの異色の双眼が全てを語った。
この理想卿が単なる願望の産物ではないことを。
キルア「ああ、分かった」
2人は、亜空間の中に吸い込まれ、現世へ繋がる光の帰路の中をえもいわれぬ速さで駆けてぬけた。
13/15
prev next△