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大きな肖像画には王が描かれていた。その横には、犬と赤の・・・おそらく愛玩物がおまけとして描かれている。その愛玩物は権威を持っていることの象徴で、金や馬に等しい価値があった。
あるいは『赤』はそれ以上の存在だったかもしれない。

この世界における『赤』は人を慕ったり、敬ったりすることは一切ないくせに、地位にはこだわりもせずバカにされても御構い無し。それに突然曲芸をしだす。
『赤』のような一風変わった生き物を包めて天やどこかの『贈り者』と呼んで、一家一台が所用するといったブームが“富裕層の間”では流行っている。

贈り物の中でも『赤』というのは特別だ。
どういったところがといえば五体満足で、特に欠陥が無い。それに何より雄弁だった。
王が困った時、占い師も顔負けな助言をする。実際その助言によって、隣接4カ国の四天王のトップに君臨した。
けれど、欠陥の無い『それ』など、本来ならあり得ない。
だから外見的には問題はないが・・・言動や動きには現れていたから、やはり『赤』は紛れもなく贈り者だった。

人々を災いから護る為の____。


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