井戸の底には水がない。何故なら。


闇。
気が付けば井戸の中。
視覚的情報は全きの黒(ぜろ)。
上からは水飴のようなものが垂れ込める。
時折声が聞こえたら、おうたみたいね。
コンコンコン。
「誰か助けてここからだして」
「いいよそこから登っておいで」
「そこにいるのはだれ」
「神様だよ」
空が青ざめるのはいつかしら。
青と紺色の変わり目はいつかしら。
いつが月でいつが太陽。
謎めいた世界みたいね。
ずっとつらづらしているから、いつ寝てるのかもわからないの。
今は夢ですか。今は現実ですか。
瞼裏にニセモノの光を浮かべながら、我を忘れて依存してるみたい。
誰が向こうにいるかもわからない。

上から光が刺した。

蓋がつけられていたんだ!
視界を返して!
あのお歌が聞こえる。
私を眠らせる為だったのね(!)
これは水飴じゃない。
ケモノのヨダレだったのね(!)
それともトロールの鼻水かしら(?)
・・・ああ、何だか寝心地がわるいとおもったのよ!
この足の感触に。この異臭に。この白骨死体に。
私は屍の上にいたのね(!)


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