残った傷跡




ヴィランに集中し過ぎて日詠の異変に気付くのに遅れたのは失態だと後々で後悔した…。
気付いたのは脳みそを出した気色悪ィヴィランが爆豪に突っ込んでくる前だ、俺達より少し離れた場所に居た日詠が手が沢山ついたヴィランに向かって走って行く姿を見てようやく日詠の様子が明らかにおかしかった事に気が付いた。

俺があいつの名前を呼んだのと、あいつが…恐らく"個性"で出したであろう武器で自身を突き刺したのはほぼ同時だったように思う…その場に居た誰もが目を見開いていたと思う程にそれは突然だった…。
俺は柄にもなく焦って倒れた日詠に駆け寄って生死を確認したら、気を失っているものの命に別状はない…ただ流れる血の量が多すぎる、危険な状態であることは変わりないと思って突き刺さっている剣を抜いて傷口を凍らせてなんとか止血させた…医学の心得はよく分からないからこれが正しい判断かは分からない、もしかしたら間違っているかもしれねぇ…けど赤い血が流れるのを黙って見ている気にはなれなかった。
そうこうしている内にオールマイトがヴィランをぶっ飛ばしたりなんなりしてトップの実力をこの身に間近で感じさせられた…。

(これがプロの世界か…)

完全にヴィランがオールマイトに気圧されている内に気を失っている日詠を抱き上げ移動する事を決めた…切島が傷だらけで気を失ってる日詠を心配そうにしていたがとりあえずまずは安全な場所に運ぶぞとだけ伝えて移動をしようとした…が、緑谷が一向に動かずオールマイトの方を見てぶつぶつと何かを呟いていた。

「オールマイトから、離れろ」

目で追えなかった、気が付いたら緑谷がヴィランの方に文字通り跳んでいっていた。
それからようやく教師陣がたすけに来てくれて難は去ったが…緑谷、なんなんだあいつは…考えなしにも程があるだろ……、それだけ考えて抱きかかえている日詠の顔を見た…。
俺もあれくらい考えなしに突っ込んで行ってたらこいつはこんなに傷だらけにならずに済んだんじゃねぇかって、思っちまった。

気を失っていた日詠はすぐに先生と一緒に病院に救搬送はんそうされた。
傷的にはリカバリーガールの治癒で十分らしいが、保護者が相澤先生しか居ないのと精神面的な意味で目覚めた時に近くに居た方が良いだろうという判断かららしい…生徒は自らの"個性"で傷を負った緑谷と日詠以外はほぼ無事だった。






──夢を見た──。
それは終わらない悪夢…死んだほうがマシに思える程の拷問に近しい何か…。
はっきりとした事は分からないけど、それが何故だかとても懐かしく思えた──…。



「…ぅ……?」

目を開けると見慣れない天井…ぼうっとする頭を回転させて状況を把握しようとする…真っ白な天井から少し目線を動かせば点滴用の液体が入った袋が吊るされているのが見える…もちろんその液体は私の腕へと繋がれ流されているわけだが、それが薬品なのか栄養を摂る為のものかは流石に分からない。
そもそもここはどこ…いや、分かってきた…病院だ。

「いっ……!!?」

意識がはっきりしたところで身体を起こそうとしたけどズキズキとした痛みが身体中を駆け回り、とてもじゃないが起き上がる事なんて出来なかった。
そしてその痛みでようやく、何故こんな所にいるのか思い出した、USJで起きたヴィランの襲撃…私はそこで消太くんがヴィランにやられている姿を見て…そこから大半の記憶が無い…ただ覚えているのは…。

「暴走……しちゃったんだ…」

あれだけ頑張って抑えてきたというのに、あれだけ自分に言い聞かせて…その為に自分を押し殺してきたのに、たった一つの引金で全てを台無しにした…。

「目が覚めたか…」

自分の不甲斐なさに泣きそうになっていると聞き覚えのある声が部屋に響く…痛みを我慢しつつ身体を起こすと身体中包帯を巻いている人が近くで立っていた。
一見ミイラ男のように顔も分からないぐらい包帯を巻いているその姿はホラーにも見えなくもないが誰か、なんてすぐに分かった…安心感とじくじくとした痛みが胸の奥にうまれて思わず涙を流してしまった…ここ最近、私の涙腺は緩くなりすぎじゃないか。

「消太くん…」
「ああ…」

返事をすると、まだ辛いだろうにふらふらとゆっくりとした動きでベッドの脇にある椅子までいくとそれに座ってしんどそうに息を吐いた。

「ここがどこか分かるか?」
「…病院…」
「ここに運ばれた理由はどうだ」
「"個性"が…暴走して……それから…」
「…その暴走を自分で止めようとしたのか、自分自身を突き刺したと聞いたぞ…」

ああ、そうだ…私は消えそうな意識の中で誰かを傷付けるくらいならと、殺したいという気持ちを誰かにぶつけるくらいなら…と、暴走で自我と理性を再び失いかけたあの一瞬に全ての感情を自分へと向けた…。
死ぬつもりだった…でもあの一瞬、剣が私を貫く寸前…誰かに名前を呼ばれて、死ぬのが怖くなったんだ…それでどうして生きているのかは分からない、無意識に力を制御してしまったのか…それとも別の……。
うっすらと思い出した、倒れて気を失っているボロボロの消太くんに触れていた時の事…私はあの時何をした…?自分の手を見つめていた。

「あの後お前はほぼ丸一日意識が戻らなかったわけだが、あんな事が起こった後って事で翌日…まぁ今日なんだが、臨時休校になったらしい…明日は普通に学校があるが学校に行くかはお前の判断に任せる」
「…消太くんは…?」
「教師が休むわけにはいかんだろ」
「…私達を安心させる為にまた無理するんだね…」
「……それがプロのヒーローだ」
「…そっか…じゃあ私も学校に行くよ、皆に迷惑かけたから謝らないと…」
「そうか」
「消太くん…」
「どうした…?」
「…ありがとう…」
「……」

顔は包帯で分からないけど笑った気がした…。
それから少しだけ消太くんと話して治癒を施してもらったけど念のため退院は明日という事でそのまま警察の事情聴取を受けて、それから消太くんの側に居座ってた。
その時消太くんから目になんらかの後遺症が残る可能性があると聞かされまた泣いたけど、消太くんは私が落ち着くまで「気にするな」とか不器用に慰める言葉を言っていた…いつもなら頭を撫でてくれるのに、それが無くて更に物悲しく感じて涙がなかなか止まらなかった。





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