君の声は心に響く
敵襲撃から翌々日、朝早くに私は一人退院して家に戻って簡単にシャワーを浴びてから学校に向かった為、朝のHRがはじまるギリギリの時間に登校する事になってしまった…先生からは事情を知っているから少しぐらい遅刻しても問題は無いと言われたけど、そこまで甘えるわけにはいかず…でも血が髪に付いたまま登校するのも嫌だったのでシャワーだけでも浴びた、そのおかげで走るはめになってしまったのだけど。
家から走ってきたから息を切らしながら教室の扉を開けると注目を浴びて思わず思いっきり扉を閉めてしまった。
「何やってんだお前…はよ入れ」
「…はい…」
いつの間にか後ろにいた消太くんに言われ再度教室の扉を開けておそるおそる入った。
いやだって…視線集まってなんか怖かったんだもん…。
「お早う」
「相澤先生復帰早えええ!!!!」
プロすぎる!とか聞こえてきて思わず苦笑した…消太くんが教室に入ってから戸を閉め、自分の席に座って鞄を下ろした。
「先生無事だったのですね!!」
「無事言うんかなぁアレ……」
「俺の安否はどうでも良い」
私としてはどうでも良くないよ消太くん…心の中で突っ込む。
「何よりまだ戦いは終わってねぇ」
「!?」
「雄英体育祭が迫ってる!」
「クソ学校っぽいの来たあああ!!」
いつも思うけどこのクラスすごいノリがいいよね、明るい人が結構いるからかな?
まぁ楽しいから問題は無い、毎日張り詰めてたら気が滅入るもんね…それにしても体育祭かぁ…プロのヒーローになる為には欠かせない行事だっていうのは分かってるけど、あまりノリ気になれないな…。
私が目指すのは消太くんのようなヒーローだ、できるなら目立ちたくないって気持ちがある…目立つの苦手だし、私は自分にできる事をして人を
救けたい…それだけの気持ちでここまで来たから…でも……。
ちらりと少し離れた所にいる爆豪くんを盗み見た…やっぱり燃えてるんだろうな、爆豪くんこういうの好きそうだし、あれだけプライドが高いなら多分一番になる事を目指すだろう……少しだけ、不純な動機だけど…それを考えるならやる気が出てくる。
私はずっと思ってた、爆豪くんと一対一で戦いたいと…今の私が勝てるかは分からないけど、全力で彼とぶつかってみたいと思った。
四限目が終わって昼休み…突然の
敵襲撃からの体育祭、今後も色々あるだろうけど通常の勉強も疎かにしないようにしないとな…と、盛り上がってる教室の中で授業で使ったノートを少し確認してから机に教科書と共にしまっていると目の前に影ができた…顔を上げて影を作ってる人物へと顔を向ける、まぁやっぱり焦凍くんなんだけど…。
授業中に思い出したけどお弁当は作って来れなかった…今日は代わりに奢ろう…一応お小遣いは貰ってるので自分の財布に余裕はある。
「ごめん焦凍くん、お弁当持ってきてません」
「………あぁ、忘れてた」
「殴っていいですか」
「いや、待て、落ち着け、悪かった…それより傷はもう大丈夫なのか」
「…いいですよもう、今日は奢ります、明日から作りますし…傷はもう大丈夫です、痕は残りましたけど…ご迷惑おかけしたみたいですみません…」
「奢らなくても良いけど作ってはくれんのか…そうか、無事で良かった……相澤先生がやられて暴走しちまったんだろ、俺もその場に居た奴らもお前に被害を受けた奴はいねぇから気にするな」
「不甲斐ないばかりです…」
話しながら教室から出て食堂に向かう…今更だけどすごい自然に二人きりになる事が多くないかな、私ほんといつか焦凍くんのファンに刺される気がする…強くてかっこいいし頭も良いし…そう考えると爆豪くんもなかなかだけど…なるほど、ここで性格の問題が出てくるわけか。
一人で納得して並んでいると焦凍くんが別の場所を見ていた。
「焦凍くん?」
「ん……どうした」
「いや、こっちが聞きたいんですけど」
「…悪ぃ、気にするな」
「はー…まぁ深い事は聞きませんけど…先に座ってますね」
「ああ」
できあがった温かい天ぷら蕎麦が乗ったお盆を持って空いている席に座って焦凍くんが来るのを待つ…鰹ダシの匂いが湯気に乗って漂ってくる、やっぱいいね、食欲がそそられる…じっと器の中を見てると空いていた前の席に焦凍くんが座った。
「いつも思うが先に食ってて良いんだぞ」
「なんか癖で、つい…いただきます」
「いただきます…家でもずっと待ってるのか」
「んー…ご飯は揃って食べるのが当たり前というか…寂しいじゃないですか、一人で食べるの」
「…そういうものか…」
「一度誰かと一緒にご飯を食べてそれが幸福だと感じたらっていう私の話ですよ、他の方がどういうものかは分かりません」
ずるずると蕎麦をすすって食べる…やっぱり美味しい、どうしたらこんな味が出せるんだろう…レシピを教えてもらいたいものだ。
「…お前は…」
「はい?」
「お前はいつも優しいが何を考えて生きりゃ結構壮絶な人生送っておきながらそこまで人の事を気にする事ができんだ」
「…え、もしかして貶されてます…?」
「いや、褒めてるつもりだったんだが…」
「ほ、褒められてる気がしない…そしていきなりですね…何故さっきの話から私が優しいなんて話に…?」
「…いつも俺が話し辛いと思う話を俺に振らずに上手い事受け流してくれっから…か?」
「いや、私に聞かれても」
「…悪ぃ、俺もわかんねぇ…」
申し訳無さそうにしながらいつの間にか食べ終わっていたのか「ごちそうさま」と手を合わせている焦凍くんを見てなんの遠慮も無く私の所にある海老の天ぷらを一本相手の器の中に入れながらうーんと考える…焦凍くんがそれに不満そうな顔をしているのが見えるが無視しよう。
「…おい、俺は良いからお前が食え」
「私が何を考えているのかと言われましても…うーん」
「無視か」
「このまま焦凍くんとご飯続けてたら焦凍くんのファンに刺されそうだなとか、焦凍くんいつも私といますけどそろそろ私以外の友達作った方が良いんじゃないですかとか、今日の夕飯どうしようかなとか考えてますね、最近は」
「…ほんと意外と辛辣だよなお前…」
居心地悪そうに目を逸らす焦凍くん…だけど本音だよ、きみこのままだと高校生活という青春真っ只中な時期を友達が少ない状態で終わるぞ…それはどうかと思うよ…友達作ってよ、じゃないと多分私嫉妬で狂った女の子に刺される未来が待ってる気がするよ…いや、嬉しいんだけどね?心を開いてくれてるみたいで嬉しいんだけどね?
「焦凍くんは私以外の友達を作るという課題をこの高校生活が終わる前にクリアするべきだと思うんですよ…」
「そんなにか」
「そんなにですよ…まぁ、話を戻しますと私が優しいかは別として元々他人を気にする性格なんでしょうね、良くも悪くも。小さい頃から人の顔色を伺って生きてきたが故に人の嫌だと思う話題はすぐ分かります…触れて欲しくないなら自然に話題をすり替えるくらいならできますしね」
「………」
「それとまぁ…信じてるんですよ」
「信じる…?」
「いつか抱えてる事を話してくれるって信じてるんです、話しても良いって思ってくれるぐらいの信頼を寄せてくれるんじゃないかって淡い期待でもあります…話したくないならそれでも良いんですけどね…でも…」
「…?」
「できれば独りで抱えていて欲しくないんです、何もできないかもしれないけど…それこそ他人が首を突っ込んで良いものじゃないかもしれないけど…心のそこから笑って欲しいから」
言いたくないなら言わなくても良い、言われた所で私がその辛さを代わってあげる事はできないから…きっと全部を理解する事はできない事は分かってる…それでも側で支えてあげられるくらいはできるから、独りじゃないって事を分かってほしい。
それを伝えたら焦凍くんは何かを考えるように俯いてしまった…いつもは私より背が高いせいでできないけど今なら座ってるからできそうだ…少し自分の腰を上げて
徐に手を伸ばして焦凍くんの頭を軽く撫でてあげると驚いた顔をして色の違う二つの瞳に私を映したから気恥ずかしくなり、手を引っ込めてそのまま食べ終わった食器の乗ったお盆を持って片付けようと立ち上がると、焦凍くんも立ち上がって私のお盆も持ってすたすたと片付けに歩いていってしまったから戸惑った。
怒らせただろうかとおろおろと後ろを小走りに追いかけていると、「日詠」と名前を呼ばれて見上げるけど顔は見えない…そして足も止まらない。
「…ありがとな」
聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で言われたけどはっきりと聞こえたお礼の言葉にむずがゆくなって思わず顔が熱くなった…。
お礼を言われるような事はしてないのに、その言葉は焦凍くんの心からの言葉だと分かってとても嬉しくなったのだ。
その日の放課後、
敵襲撃の話を聞こうとしに来た方々や宣戦布告に来たB組の人や普通科…恐らく別の科の人達が来たのでこれを機に友達を増やしたかったんだけど爆豪くんのせいで友達を作る事はおろか、体育祭で戦う敵を無駄に増やしてしまったのは言うまでもない…別にいいけど巻き込まないでよ爆豪くん。
こっそり次の日B組の方に行って謝ると一部の男子生徒以外とは仲良くなった…B組の女の子も可愛い子が多いし優しい子も多くて安心してお友達になってもらった。
鉄哲くんという男子はやたらA組にライバル心を燃やしてるのか少しこわかったけど打ち解ければ良い人だとお互いに分かり合う事ができて良かった…まぁライバルっていうのは消えないだろうけど。
物間くんという子はなんかやたらねちねちと言ってきたので完全に無視を決め込んで
一佳ちゃんと話してたら私と似たような"個性"を暴走させてしまって少し騒ぎになってしまって申し訳なくなったけど一佳ちゃんと他の女の子達に「物間が悪いから気にしなくて良い」と言われたのでとりあえずは納得しておいた…にしても彼の"個性"はなんなのだろう、私と同じような"個性"なら仲良くできると思ったのにその日から避けられるようになってしまった。
back /
top