プロローグ
劈くような破壊音と下卑た笑い声が複数、暗く細い路地にはそれと小さな足音と息を切らす音が響いた。
響くと言ってもその足音は微々たるもので、誰かがそれに気付く事はない…遠くで響くパトカーのサイレン音は破壊音からだろう。
小さな少女は涙と鼻水とで顔をぐしゃぐしゃにしながら必死に知らない道を駆け回っていた。
(なんで、なんで、なんで)
その疑問に答える人はここにいない…独りでひたすら走っているからというのもあるが、少女自身その問いが何故生まれてくるのか分からなかったからだ。
わけが分からないまま夜道を、それも人通りを避けて歩いていた…そこを”
敵"が襲ってきたのだ。
何故自分がここにいるのか、何故無意識とはいえ人通りを避けて歩いてしまったのか、何故襲われているのか、何故、何故、何故…少女は最初はそんな疑問を持っていたものの次第に追い詰められ思考は止まり、恐怖と疲労で息は上がっていきおぼついた足がもつれその場に転び、倒れてしまった。
(にげないと、にげないと、はやく!はやく…っ!)
思いとは裏腹に少女の身体は疲弊しきって地に伏したままがくがくと震えて動けずにいた…。
素足だった為足の裏は土と小さな傷による血で汚れ、転んだ拍子に足だけでなく腕や顔にも傷ができてしまっていた。
そんな事を気にも止めず僅かな力を振り絞ってずりずりと地を這うように動こうとするが、背中から勢いよく地面に押さえつけられ小さく声を洩らした。
「ようやく捕まえたぜぇ…!ガキが手間取らせやがって!」
「まぁこんだけ体力あるガキなら"個性"があってもなくても物好きなやつが買うだろ」
「子供は攫いやすい上に金になるからなぁ!譲ちゃんもこれに懲りたらこんな時間に一人で出歩いちゃいけないぜ?まっ!もう自由になれるかわかんねぇけどな!ギャハハ!!」
数人が少女を取り囲みながら笑って話しているのを少女は朦朧とした頭で聞いていた。
小さな子供が1人に対して大人が数人…力でも到底叶わないというのに"個性"を使えるとはいえまだ安定して使えるかも分からない子供と、己の"個性"をよく理解しその力を持て余している大人、どっちに分があるのかなど一目瞭然だ…が、その時そこにいた数人のうち1人が思いきり吹き飛ばされ、それに当たった少女を踏みつけていた男も共に飛ばされ壁に激突しそのまま崩れ倒れた。
「子供を狙うのは合理的だが、攫うならもっと隠密にやるべきだったな…俺としてはすぐ見つかってありがたいことだったが」
低い声でそう言うと素早くその場にいた
敵達を蹴散らし拘束すると、男はすぐに少女に近寄り無事を確認する為、少女を抱き起こした。
「おい、大丈夫か」
少女は霞む視界に男を映すとその小さく震えた手で男に
縋り付くように男の服の裾を握り、そこで意識を手放した。
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