きっと初めから思ってたこと
飯田の診察が終わり、緑谷が病室に戻ってきたから飯田の腕に後遺症が残るという話をしたあと、とある事に気付いてそれに対して謝ったら何故か爆笑された。
俺が関わった奴の手がダメになる感じになってるのは見て分かるだろう、なんで笑われるんだ…緑谷も飯田もボロボロだ、なんだこれ、呪いか…そういえば日詠も腕に大分傷を負っていた、飯田程では無いにせよ包帯が巻かれた腕と手が痛々しくて…女の身体なのに傷が残るとかあったらどう責任を取ればいいのかわかんねぇ…。
しばらくその話題で談笑(一方的に俺が二人に笑われただけだが)していると緑谷がそういえばと話題を切り替えた。
「轟くんにずっと聞きたかった事があるんだけど」
「?なんだ」
「怒木さんとは体育祭前からも仲良いよね、殆ど一緒にいたけど二人って…えっと…そ、そういう関係なのかなって…?」
「そういう関係…?」
「つ、つつつつ付き合ってるのかなって!!」
真っ赤になって答える緑谷に正直なんでこいつそういう話題を自分から持ってきたんだ…明らかに挙動不審になるあたり慣れてないだろと思った…飯田は飯田で不純だなんだと言ってる、うるせぇ。
「別に付き合ってはいねぇな」
「え、そうなの」
「…むしろなんでそう思った…?」
「いや、だって…怒木さんと話してる時の轟くん…なんていうか、柔らかい雰囲気というか…よく笑ってる気がする、から」
「ああ、確かに…体育祭でも怒木くんを見る目は他とは違って優しかったな」
緑谷と飯田の言葉に目を見開いて驚いた…そんなに俺は他の奴と態度が違っていたのか…?そういう事に疎そうな飯田でさえそう言うほどに俺はあからさまな態度をしていたのか…思い返しても自分ではよく分からない、そもそも生まれてこのかた人と必要最低限の関わりしか持ってこなかった俺にとっては唯一体育祭以前からの"友人"と呼べる存在…な筈だ、そう思ってきた。
だが緑谷が言うには体育祭が終わって、他の奴ともそれなりに話すようになってからも日詠相手だと違う…いや、他の奴と話すようになったからこそそれに気付いたんだろう…そう言われた。
「………」
「え、えっと…じゃあ轟くんは怒木さんの事どう思ってるの…?名前呼び合ってるって事は結構心を許しあってるって事だよね…?」
「名前はあいつが呼べって言ったからで……最初あった頃は変な奴だと思ってたんだが…話してる内に気を許せるようになって…今は側に居ると安心できる奴というか…でも目が離せねぇ…」
「(あ、これ多分無自覚なやつだ…)そ、そっかぁ…」
「女子に変な奴とは失礼じゃないか轟くん!!」
「飯田くん、そこじゃないと思うよ」
思った事を口にしてようやく気付く…確かに他の奴に思う事は無い事も思ってる…でもこれは親しい友人だからこそとかじゃねぇのか…?
「と、轟くんはさ…もし…例えばの話だけど、怒木さんが他の人と話してたらどう思う?」
「どうって…あいつはコミュニケーション能力たけぇからどうもしねぇな」
「相手が男でも?」
「………あいつが話したいんなら別に何も」
「じゃあ怒木さんが轟くんと同じくらいの距離で誰かとすごい仲良くしてたら?勿論相手は男で」
「…日詠が…俺と同じ距離で……」
つまり日詠が他の奴と話して、笑って、そいつの為に弁当作って、そいつの名前呼んで…そいつを抱き締めたり抱き締められたりされてるのを想像した…ら胸が苦しくなった…なんでだかすげぇチクチクとした痛みとモヤモヤとした何かが胸んなかを締め付けてくる…気がする。
なんでだかすげぇ泣きたくなった…なんだこれ…。
「……すげぇ胸がいてぇ……」
「む…!大丈夫か轟くん!?今誰か人を呼ぶぞ!」
「いや、いい…呼ばれても困る」
「…飯田くんも苦労しそうだよね…」
「何のことだ?」
「……なぁ、緑谷…なんなんだこれ……」
「あー…うん、轟くんさ、多分怒木さんの事好き…なんじゃないかな…?」
好き……?俺が、あいつを…?
緑谷の言ってる"好き"はこの場合恋愛的な意味での"好き"だというのはいくら俺でも分かった…俺があいつに、日詠に抱いてた安心感と守りたいって気持ちは、つまり…そういう感情からで……?
ストンと胸の中のつっかえが取れた感覚がしたのと同時に、
炎熱を使ったわけでもないのに顔が熱くなった…。
待ってくれ、いつからだ…いつから俺はあいつへの気持ちがそういったものへ変化してたんだ…?ああクソっ!頭が混乱してくる…でも嫌じゃねぇってことはそういう事なんだろう…初めての感覚でわけが分からないけど、多分俺はあいつの事を好き…で、間違いねぇんだと思う…さっきから心臓の音がすげぇ…。
「……俺、日詠の事好きだったんだな…」
「(あの轟くんの顔が真っ赤になってる…)た、多分…確信は無いけど…」
「いや……納得した、ありがとな…」
何とか心を落ち着かせた後に気付いたが緑谷の質問は相手を相澤先生で考えずにクラスにいる連中の誰かで考えてた時点で気付くべきだったのかもしれない…大分自覚するのが遅くなっちまった俺の初恋がどうなるかは分からないが、気付けて良かったと思った。
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