「何かしらない?」

俺は目暮警部と会ったあとポアロに行き、安室さんに話をしてみることにした。安室さんは「んー」と小さく唸り、その頭の中から知識を出そうとしている。丁度客は誰もおらず、バイト仲間の梓さんもついさっき買い出しに行ったようだ。

「女性だけの被害で、目立った外傷はない…うん、たぶんコトリバコだね」
「コトリバコ?」

なんか小鳥でも入れる箱のことか?そんなことを思っていれば、安室さんは苦笑しながらメモに文字を書いてくれた。

「一般に知られているのはカタカナ文字で"コトリバコ"…でもこれを漢字にすると…」
「!!」
「こうなるってわけさ」

安室さんが書いたメモ用紙には
"子取り箱"
という文字が。

「コトリバコと言うのはこの文字通り、子…すなわち子孫をできなくする呪で、ターゲットとなるのは女性のみ。箱の中には呪いの元、水子…が入っているといわれています」
「そんなモノが…」
「箱はとても煌びやかな装飾を施され、女性はそれを見ると必ずと言ってもいいほど手を出してしまうようで…」
「じゃぁ、今回も…」

もし安室さんが言う通りコトリバコの仕業となれば厄介だ。箱は手の平サイズの小さいものらしく、バックなどに入れられていたら分からない…。ましてや家の中に飾られたりしていたら…。

「くそっ…どうすれば…」
「相当な厄介な代物ですよアレは…」
「ほんまに…しかもそれを探すなんて…ほんま厄介な仕事くれよったわ…はぁ〜…」
「「!!!??」」

何時の間に入ってきたのか、バッと横をいれば隣に座る男はヘラっと笑みを浮かべながらこちらに手を振る。その男に安室さんは瞬時に警戒態勢にはいり、俺をカウンター席から引き離す。

「…何故ここにいるんですか、メロンボールっ!!」
「いややなぁ、仕事に決まってるやん。なぁバーボンさん、紅茶入れてくれん?」

男の髪は派手なピンク色で、ヘラヘラしている笑みではその人物が何を考えているのか読み取れない。それに彼は今安室さんのことをコードネームで呼んだ。ってことは組織の人間っ!!

「どうも、江戸川コナン君やろ?話は聞いとるで…俺メロンボールって言われてんの、よろしゅうね」

そう言って握手を求めてくるが、組織の人間となんて仲良くする気はさらさらない。というか、話は聞いたって誰からだっ!!

「あちゃー…警戒されてしもうたか…しゃーない、出直しますわ。ほんなら〜」

メロンボールは頭を書きながら苦笑の笑みを浮かべ、ポアロから去っていく。俺と安室さんは盗聴器などがないか確認し、また席に着く。

「…安室さん」
「あぁ、奴はメロンボール。変身の意味を持つ幹部だ。彼は戦闘能力は未知だが、俺と同じく情報収集が主な仕事。人を殺したことはなかったはず…」
「でも、僕のことを…」
「分かっている。ヤツとは明日一緒の仕事が入っている。探りを入れてみるよ」

俺は安室さんの言葉に頷いて、この件に関しては任せておく。それより、コトリバコだ。
…まてよ?

「…ねぇ、メロンボールさっき、"探すなんて、厄介な仕事くれた"って言ってたよね」
「…ヤツの探し物は"コトリバコ"?しかし何故…組織で使うのか?」
「使うってなると相当やばいよ…女性を簡単に殺せるってことだよね」
「組織の手に渡る前に…探し出さなければ…」

安室さんの言葉に俺も頷き返す。

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「あれが慈母様の婚約者か〜」
[情報を得るはずが警戒されてどうするんだ]
「もう、それ言わんといてや…はぁ帰ったらイナバさんに怒られそうや…」

男は薄暗い路地を歩きながら誰もいない空間に話しかける。そうすればどこからともなく、声が返ってくる。

「ま、どっちが先にコトリバコを見つけられるか競争や…楽しませてくれや、降谷零さんに工藤新一くん」

ペロッと舌で乾いた唇を舐めながら、男はその栗色の瞳を光らせる。