翌日
車を走らせ、今回共同任務にあたるメロンボールとの待ち合わせ場所に向かう。待ち合わせ場所にはすでに彼は到着しており、歩いている女性一人一人をごく自然な目線で観察していた。
人間観察を得意とする降谷だからこそ気づくものだが、素人が見てもそれを気づくものはいないだろう。それくらい彼の観察力は長けていた。
己が来ていることにごく自然に気づき、手を振りながらこちらにやってくる。

「バーボンさんお迎えおおきに」
「…いいから早く乗ってください」

そう言えば、彼はヘラっと笑みを浮かべて助手席に乗り込む。
メロンボール…彼は齢16歳でこの裏の組織に入った。名は明かさなかったが、学生であるというのは確かな情報。公安のパソコンで検索したが、彼に一致する人物は見当たらなかった。京都弁を話していることにより、京都周辺出身なのは間違いないだろう。
夏休みなどの長期休みの際組織で最も活躍をする(現在夏休み)。
基本は情報収集のようで、殺しはまだしたことないようだ。だが、戦闘能力はジンすら認めるほどらしい。
常に笑みを浮かべ、こちらに己の心情を全く読ませない。正直バーボンの存在と似たようなところが多い人物だ。
横目でちらりと彼を見れば、その瞳は外の景色に向けられていた。

「…そう言えばアレの場所分かりました?」
「アレとは何です?」

こちらがとぼけたように言えば、彼はフハッと笑みを浮かべ本当におかしそうに笑う。

「もう、バーボンさん分かっているのにそなんこと言って〜」
「いえいえ、本当に分からないんですよ」
「ふ〜ん、ま、ええですわ。アレを見つけるんは俺ですから」

そう言ってメロンボールはまたも外の景色を見る。

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任務はそう時間も立たずに終わってしまった。

「なんや結構あっけなかったなぁ〜」

そう言いながらのんきに空を仰ぐメロンボール。俺も今回の件は確かにと思いながら彼のその言葉に何も反応することなく、彼の後ろを歩いていた。
その時だった。
急なサイレンの音があたりに響きわたったのは。

「血の匂い…」
「え、ちょっ!!」

メロンボールはそう呟くと、まるで何かにとりつかれたように走りだす。それを慌てて追えば彼が向かったのは救急車と警察がいるエリアだった。
ここは警視庁の管轄であった為か、見知った顔ぶれが揃っていた。その中にコナン君までいた。

「コナン君」
「あ、安室さん…」
「コトリバコかい」

その言葉に彼は頷きを返してきた。
キープテープから出てきた遺体は例にもれず、やはり目立った外傷はないらしい。今回の第一発見者は男性で、蹲っている女性がおり、気になって声をかけたらすでに亡くなっていたらしい。
俺達は情報を共有するため近くのカフェに入った。メロンボールもついてきたが、この際彼のことはスルーする方向でいる。

「…既に匣はなかったか…」
「男性が持っているならいいけど、女性だとな…」
「ぁあああ!!なんでこないなことなってるんや!!」

メロンボールは頭をぐちゃぐちゃにしながら叫ぶ。

「でもメロンボールは何故コトリバコを?」
「…あー仕事や」

その言葉に俺とコナン君の目つきが変わる。

「組織の?」
「まぁ組織っていったら組織やけど…黒やないな」

その言葉に俺とコナン君は顔を見合わせる。黒の組織での仕事でないとなると彼は一体なんの組織だといっているのだ?ノックだというのか?…いや、仮にノックだとしてもそう簡単に口を割るわけないだろう。

「ん〜…ん?バーボンさん、コナン君あれあれ」
「なんです?」
「あっ!!」

メロンボールが指さした方を見れば、綺麗な女性がバックの中に小綺麗な匣を入れているところだった。

「間違いない!!あれや!!コトリバコやっ!!」
「アレがっ!!」

女性がバックに入れた匣は手の平に収まるほど小さいが、金色や綺麗なガラスで装飾され、とても美しい物だった。
メロンボールはダッシュでその女性に走っていく。だが女性はタクシーを拾ってしまう。

「あかーん!!しゃーない!!夜魔徳(ヤマンタカ)くん頼んます!!」

メロンボールがそう言うと彼の影から黒い物が出てきて、タクシーにくっつく。

「バーボンさん!!車お願いします!!」

あまりのことに目を見開き固まっていれば、メロンボールの必死な声に意識を取り戻す。