「沖矢さん今日はありがとう」
「いえいえ、僕も楽しめました」

そう言って立ち止まっているのは深夜最終の電車を待つ駅のホームだった。
今日は東都から離れた場所でホームズのイベントがあった為沖矢さんに頼んで連れていってもらったのだ。イベントに参加した後も…というか今までずっとホームズの話をしていた所だったのだ。

「でもまさか安室さんまで参加しているとは思わなかったよ」

そういって俺の沖矢さんがいる方と逆を見れば、安室さんは沖矢さんに向けていた鋭い視線を外してこちらに笑みを向けてくれた。沖矢さんが赤井さんだということは安室さんも知っている上に元々馬が合わないところが多いのか、公安とFBIの合同会議でもほぼ高確率でもめるらしい。
そんな二人だったが、今日はどちらもホームズ好きとあり、比較的衝突は少なかったように思える。先程のカフェでも三人で和気藹々…まではいかないかもしれないが、イイ感じに過ごしていた。

「安室さんも車じゃなかったんだね」
「えぇ、点検に出していてね…」
「ほぉ、奇遇ですね」

赤井…沖矢さんのその言葉にイラッとした表情をしたが、大きく息を吐いて落ち着かせたようだ。
ははは…と乾いた笑みをこぼし、電車が来るのを待つ。既に夜遅くということもあってホームには俺達三人しかいなかった。しかも結構な田舎の方の為か利用者は少ないようだ。
ホームで電車が来るのを待っている間やはり会話の中心はホームズの話だった。
白熱しているとカタンカタン…と独特な音が聞こえ電車が来た。

俺達は話に夢中になっていた為、この電車の行先をしっかり見ていなかった。

その為まさかあんな体験をするとは思っても見なかった…。