暗い森の中を歩いていればうめき声があちらこちらから聞こえてくる。
先頭を鬼灯さんが歩き、安室さん、俺、赤井さん、白澤さんの順番で歩いている。落ち葉をサクサクと音を立てながら歩いていれば赤井さんがふと質問をする。

「…結構歩いているが、どのくらいでつくんだ?」
「地獄は広いですからね…まだまだ先は長いですよ…っと走ります」

そう言って歩いていれば鬼灯さんが何かに気づきいきなり走りだす。
俺はとっさに赤井さんに抱っこされる。俺は後ろの方を見ているため何故いきなり走りだしたのかがよくわかる。
白澤さんの後ろにおびただしい人…のような姿をしているが、腕が三本あったり、身体が二つに分かれた生き物が追いかけてきていたのだ。

「アレは!?」
「あれは!!現世で!!化け物にっ!!された魂!!!」

安室さんの言葉に白澤さんが答える。確かにそれらを見れば人のように見える。人の姿をベースに様々な部位がくっついている。赤井さんがチラッと彼らを見た後息を飲んだ。

「…まさかイルミナティ…」
「そうですか、貴方は彼らにあったことがあるのですね」
「あれはまさか」
「そう、彼らはイルミナティによってその姿をゾンビより最悪なモノ…キメラゾンビとなったモノ達ですよ」
「だいぶ時間をかけて人として分裂しだしたけど…まだまだ、って鬼灯!!」
「っ!!」
「鬼灯さんっ!!」

ドゴッと音を立てて鬼灯さんがふっ飛ばされた。
鬼灯さんが飛ばされた元凶を見ればそれは優に5Mはある巨大な人だったモノ。身体は肌色で所々に無数の口と人の手が付いている。身体を支えているのはその無数の手だ。人型ではなくどちらかというと巨大な幼虫のようだ…。
俺たちが立ち止まれば後ろから追いついてきたモノたちに囲まれる。

「キメラゾンビ…また新しい奴が入ってきたなんて…」
「これ…どうするんですか?」
「決まってるよ、とりあえずっにげr!!」

白澤さんの言葉をさえぎって黒い棍棒が目の前を通り過ぎる。棍棒は見事巨大な生き物に当たる。

「…まったく…本当にふざけていますよねどいつもこいつも私の仕事を増やしやがるいい加減にしてくださいよ本当にこっちだって疲れるんですよいや冗談抜きでてかこいつらもういっそのことこいつらまとめて阿鼻地獄に投獄させて立ち入り禁止区域をつくりましょうかそうしたら楽ですね共に喰いあい一人になればおのずと力は弱まりますそうしたらゆっくりと叱咤していくがいいかもしれませんね」

ブツブツと言いながら現れたのは先程吹き飛ばされた鬼灯さんだった。彼は口から出た血をペッと吐いて袖で口元をぬぐう。そして何やら呪文のような言葉を呟きながらゆったりとした歩きでこちらにくる。
余りにも禍々しいオーラで化け物は勿論、白澤さんも動けていない。

「貴方達まとめて阿鼻地獄行きです!!!」

そう言った瞬間鬼灯さんは近くにいた人型ゾンビをあの芋虫のような形態をしたゾンビに投げていく。ゾンビはそれはうまそうに食べていく。と白澤さんがチョイチョイと俺達を手招きする。

「今のうち行くよ」
「で、でも鬼灯さんが…」
「大丈夫、あいつはあれでも鬼の中の鬼で神の一席を担う…鬼神だよ」

赤井さんに担がれながらチラッと後ろを見れば鬼灯さんは次々に人型ゾンビを芋虫型ゾンビに投げ入れていた。…どんどん大きくなっているのは気のせいじゃないよな…。
あと「ほらもういっちょーっ!!…ほらほら、早く食べないと次イッちゃいますよー!!」と楽しそうな声が聞こえるのはスルーしようと思う。