村に入ればそこは綺麗な紅葉が彩っている村だった。

「すげぇ…」
「ほぉー、これは見事ですね」

舗装されていない道は昔の本とかに出る草道で、道の端にはたわわに実った稲穂が垂れ、奥にはぽつぽつと昔ながらの民家があった。

「これはまた昔ながらですね」
「うん…まるでここだけ時が止まったような…」

二人は目の前の美しい景色に見とれていた。
だが沖矢が何かに気づく。

「どうしたの?」
「…人の気配がしない」

沖矢…赤井の言葉にコナンはハッとなり、またも村を見る。
確かに今は朝と言えど活動時間である10時だ。ましてやたわわに実った稲はもう収穫してもいいくらいだ…それなのに誰も畑に出ていない…しかもよく耳をこらしても人の声が、生活音が聞こえない。

「…おかしい」
「見に行きますか?」

沖矢の言葉にコナンは頷き、村へ続く道へと足を踏み入れた。

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村に入ればそこは荒れ果てた村の景色が広がっていた。

「すごいな…」
「すっげぇ草ボーボー」

燐君が言う通り、舗装されていない道だったモノには左右から伸びた草が覆い隠し、微かに獣道のような痕跡があるだけだ。草があまりにも伸びている為、あまり景色は見えない。そして至る所に魍魎が飛び交っている。

「昔のまんまなんやな」
「…なんだかここだけ時間が止まったように見えますね」

俺の言葉に子供たち(俺からしたら未成年は子供)は同意するように頷く。
その時だった燈がうなり声を上げる。
全員それぞれの武器を構え、周囲を見渡す。

「…ほんと、おかしいな、人が住めるような場所ではないのに…人影が見えるなんて」
[人ならざる者ならごまんとおるぞ]

草陰から除く、赤い目たちがこちらの様子を伺うように見ている。

「…今回恐らく待ち受けているのは腐の王の眷属たち…彼らが弱いものは火。真神さんは八咫鏡を…兄さんは刀を抜いてて」
「おう」

燐君がそう言って刀を抜くと、碧い炎があたりを照らす。

「これが魔神の炎…綺麗だな」
「!!…へへへ」

耳が伸び、犬歯も伸び、頭からも炎、さらに尻尾まで出ている燐くんは正直人には見えないのかもしれない。でもそれは己の愛する大神も同じ存在だ。
彼女が背負っていた鏡から色とりどりの炎が燃え上がる。…これがアマテラス大神、最強の鏡神器…八咫鏡。

「降谷さんに渡した銃は既に真神さんの神力が込められていますので、炎属性です。志摩君は言わずもがな…勝呂君は大丈夫ですね」
「詠唱はまかしとき」
「神木さんもいいですね」
「はい!!」

神木さんの横に白狐が二匹現れていた。二匹は燈に頭を深々と垂れている。

「では、みなさん任務開始!!」

雪男君の言葉で俺たちは背丈の高い草村へと入っていった。