東都から車で八時間…相当山奥にやってきた。
おっちゃんと安室さんの運転でついたのはあたりを山に囲まれた小さな村だった。村に入る道にお地蔵様がおかれていた。

「蘭姉ちゃんは来たことあるの?」
「ううん、実は私も初めてなの」
「へぇ…こんなところに村があったんですね」
「あぁ、もう今では若者も少なくなってきたって聞いたな…」

おっちゃんはどこか遠くを見つめるかのように見えてきた村を見つめていた。
村の所々には異様にお地蔵様がいることが気になった。だが、お地蔵様と言えば、正式には地蔵菩薩と言われている。人々と共に歩み、教えに導くとういことで庶民の信仰の対象になっている。
また子供を護る神様として信仰されていることが多いとも聞く。
そんなことを思っていれば、目的地に着いたのだろう、車が止まり、おっちゃんと助手席に座っていた安室さんが車から降りる。

「ほぉーこれは立派な平屋ですね」
「あぁ小さい頃は良くここに来てたんだがな…」
「小さい頃?なんで来なくなったの?」

蘭の言葉におっちゃんは頭を傾げて「なんでだ?」と眉間に皺を寄せ考える。
その間安室さんはキョロキョロとあたりを見渡していた。

「安室のにいちゃん、どうしたの?」
「あぁ、いやね…ここ、僕の地元ににているなって…思ってね」

へぇ、安室さんってこういう田舎から来たのか…そう思って俺もあたりを見渡す。田舎ならではの広い土地に家があり、約2mほどの生垣が家をぐるっと囲っていた。
蘭やおっちゃんが中に入るため、外の風景を見ていた俺と安室さんを呼ぶ。

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ここの家主である曾祖母にあいさつした後はのんびりと過ごしていた。
俺は縁側でくつろいでいれば、どこからともなく「ぽぽ、ぽぽっぽ…ぽぽっぽ」という奇妙な音が聞こえてきた。
ふと頭を上げれば生垣から白い帽子が覗いていた。

ーおいおい、嘘だろ…少なくとも二mはあるぞ…

そんなことを思っていながらそれを目で追えば、生垣の切れ目から白いワンピースを着た女性が歩いているのが見えた。帽子はその女性が被っていたようで、優に二mは超える身長をしているということになる。
女性はそのまま歩いていき、いつの間にか奇妙な音も聞こえなくなっていた。
一体あれは?

「コナン君?」
「わっ!!」

いきなり声をかけられて後ろを振り向けば、そこには不思議そうな顔をした安室さんがいた。
安室さんはそのアクアマリンのような瞳を俺が見ていた生垣の方に向ける。だがそこに何も無いと気づくと、また俺に視線を戻す。

「何かいたかい?」
「うん…でも見間違いかもしれない」

そう言ってニコッと笑えば、安室さんはフーンと言葉を出して、また生垣の方に視線をやったのだった。