4

甲板に出ればすでに船は彼らの基地としている島についていた。船員たちは次々に荷物を下ろし、下船していく。
ローたちも船をほぼ最後尾に下船する。くまはコラソンを背負い、ローは興味深そうにあたりを見渡す。
しばらく歩けば、建物が見えてくる。最後尾を歩いていたシャルは全員が基地に入ると、その能力で風を起こす。
そうすればこの島の砂を風が巻き起こし、たちまち砂嵐に覆われる。

くまの案内に着いていっていたローは基地の地下に繋がる階段を降りていた。
そして階段が終われば、広い空間が現れる。そこにはどこから入ってきたのか海水があり、その海水には一隻の黒い船が浮かんでいた。

「…潜水艦」
「そうだ…この潜水艦はシャルがウォーターセブンの職人たちに設計図を渡して作らせたものだ」
「ここは特殊な構造になっていて…海を潜らないと外に出れない仕組みになっている」

一度は誰でもやったことがあるはずだ。
風呂場でもプールの時でもいいバケツやコップをさかさまにした状態で水の中に居れてもバケツなどに入った空気により水が浸入しない状態だ。
それによりここから侵入する場合は海の中からでしか侵入できないのだ。だが世界には海を潜る技法もある。だが、この海域には渦潮がランダムで発動しているのだ。渦潮を解除で来るにはシャルの力で一時的に渦潮を失くす必要がある。
陸から来るにはシャルによって起こされた砂嵐を潜らなければならなく、海から来るにはまたもや彼女が起こした渦潮を避け、さらに門番としている海洋生物を潜り抜け、海中から来なければならない、空からくるにもあたりに発生している乱気流を乗り越えなくてはならないのだ。

「そして、この子が…レオール!!」

シャルが声をかけると海中から一匹の巨大なシャチが出てくる。巨大と言っても今現在の姿として、マッコウクジラ程の大きさだろうか。

「「!!?」」
「この子はアイランドオルカと呼ばれる海洋生物。
あの世界一大きなアイランドクジラを唯一捕食する生物よ」

アイランドクジラ…世界一大きなクジラで名前の通り島ほどの巨体を誇っている。
そのクジラを唯一捕食するのがこのアイランドオルカなのだ。
見た目は普通のシャチと大して変わらない。
だがアイランドクジラと同じようにその大きさは巨体なのだ。そして彼らはアイランドクジラ以外にも海王類ですら捕食対象としている。

「この子はまだ子供だけど…知能は高いから避難すべき島の航路を覚えている」
「…ちなみにその永久指針はダミーだ」
「「ダミー!?」」
「ちなみにそれの示すところには獰猛な獣たちがうようよいる島」
「!?」

ここでシャルはネタ晴らしをする。
コラソンはドジっこだ。
しかも相当な。
そんなコラソンに己たちの避難先の永久指針を渡してみろ。大方こけて壊すかなんかしらのせいで敵にわたってしまうかだ。そうなれば子供たちが危険にさらされる。
そうなっては脱出の意味が全くない。
なのでコラソンにはダミーの永久指針を持たせる。
敵の目を欺くため…敵から子供たちを護るために必要なことだ。

「まぁそういうことなら…」
「まぁ仕方ないな」

コラソンは自分のドジっこ具合が分かっている為しぶしぶ了承。
ローはそのほうがいいというように頷いている。

そのあと四人はコラソンの部屋となるところに行く。
扉を開ければ本棚にはたくさんの本が入っており、広めの机に大きめのベットがあった。
くまはコラソンをベットに寝かせると静かに去っていく。

「俺がここひとりで使ってもいいのか?」
「うん、ここはある意味カウンセリングルームを兼用してもらうからね」

コラソンはその言葉を聞くと満足そうに笑う。
そのあとはローの部屋に。

「シャルの部屋の隣?」
「そ、私の部屋には薬物等が置いてあるからカギを常にかけているんだけど、よくかけ忘れる時があるの」

はははと笑う彼女の言葉にローは唖然とする。
それもそうだ。
彼女の所有している薬物のほとんどがそのままであると毒物。
口に入れた瞬間命をそのまま持ってかれる。
その部屋にカギをかけていない…そして自分がなんとなく彼女の部屋の隣になった理由が分かったローだった。

「ま、そゆことでこれからもよろしく!」