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ローがオペオペの実を食べて1年が経ち、彼らは革命軍の本部である"バルティゴ"と呼ばれる島を相変わらず拠点にしていた。
そこには革命軍の兵は勿論、戦争で孤児となり行く当てのなくなった子供たちがいた。
ローはくまにオペオペの実の制御の仕方、医術を学び、コラソンは時々シャルの手伝いをし、大半はこの島の子供たちの世話をしていた。
孤児となっていた子供たちはドジっ子なコラソンに懐き、くまに勉学を、ハックと呼ばれる魚人に空手を学んでいた。
シャルは相変わらずでフラッと任務に出ていき、フラッと帰って来ては、珍しい毒を致死量ギリギリに摂取し、ローにばれて説教される日々を過ごしていた。

「コラさん!聞いてくれまたシャルが!」
「何だ!?また毒を摂取したのか!?またお前は!!」
「何度やめろって言ってんだよ!!」
「…二人とも煩いし、やめないし」
「「煩くないし、やめろっ!!!」」

外で赤子のおもりをしていたコラソンにローはシャルがまた毒を摂取したことを伝えれば、二人から小言を貰うことに…。うんざりと溜息を吐けば二人から怒号が飛んでくる。

『ピイィイイイィ』
「あれは…一体どうしたんだ?」
「父さんたちが帰ってきた」
「ルーファか?」

バサリと聞こえた音に三人は空を見る。(その時上を見すぎてコラソンはひっくり返っていた。赤子はしっかり抱きかかえていた)そこにはまだ小さい鷲が飛び、彼女だけに分かる言葉を使いドラゴンの帰還を知らせ、それを本部に伝える。シャルは上空から降りてきた子鷲のルーファの顎下を撫でる。
顎下を撫でれば、砂嵐を起こしていた風を止める。

『ピルルル…』
「…子供?」
「どうしたんだ?」
「頭に包帯を巻いた小さな子供も一緒にいるって…」

その言葉を聞いてコラソンは一瞬悲しい顔をする。

「今回は戦争の国には行ってないハズだろう?」
「えぇ、同士を集めることが目的だったはずだけど…」
「……」
「え、ちょロー!!」

話を聞いていたローは無言ですたすたと本部の方に向かっていく。
それに気づいたコラソンは慌てるがシャルがそれを止める。

「コラさん、彼のここでの立場は?」
「あ、えっと、医術を学ぶ…!!そっかそう言うことか…」
「多分ね…今からくる子供の容態を医者として診察するための準備に行ったと思うよ」
「…そうか、成長したな」
「うん、だけど」
「容態を聞いてから行くべきだな」

「だね」と二人でクスクス笑っていれば、砂嵐が止んだ陸地をドラゴン達が本部の方に歩いてきているところだった。

「お帰りドラゴンさん」
「お帰り皆」
「あぶぅー」

三人で出迎えればドラゴンの口元には笑みがこぼれた。
幼い赤子を人撫でし、ドラゴンは兵士に担がれたまだ本調子ではないだろう一人の少年を見る。

「…ローは?」
「ルーファの言葉を伝えたら本部に戻ったよ…恐らく医務室だと」
「分かった、サボを連れていけ」
「はい」

兵士は返事をすると、すたすたと本部の方に向かっていく。


「あらぁ?少し大きくなったチャブル?」
「あぁ!!体重も順調に増えている」
「そう、名前は…」

イワンコフとコラソンは赤子の話題で盛り上がり、ドラゴンはシャルに今回のことを伝える。

「なら彼はすべての記憶を忘れているってこと?」
「あぁ、名前だけはスカーフに書いてあったため分かった」
「名前は?」
「サボという」
「サボね…」

シャルはそう言うとルーファを連れて本部に向かう。
ドラゴンはイワンコフと共に赤子をあやしているコラソンを呼ぶ。

「コラソン」
「ん?何だい?ドラゴンさん!」

たたっと走ってはズテンっと音を立てて転ぶコラソンになれたように手を差し伸べ起こす。

「新しく入ってきた子供の名はサボ…東の海のゴア王国の者だ」
「サボか」
「あぁ、ただ記憶がない…初めのうちは様子を見ておいてくれ」

ドラゴンの頼みに子供好きのコラソンはにかっと笑い、「任せてくれ」と返事を返す。