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ローとコラソンはシャルを追いかけて彼女の部屋に入る。
そこにはベットに腰かけ、ルーファの羽をなでるシャルがいた。

「…来たんだ」
「……」

シャルは苦笑してこっちに入れと手招きする。
そして椅子に座るように促すとコーヒーと紅茶を入れる。
コーヒーはコラソンとローに、紅茶カップは彼女が両手に包むように持つ。

「さて、何から話そうか?」
「…すべてだ」
「…すべてか」

ローの言葉に彼女は苦笑して話し出す。

「…まぁこれは父さんしか知らないことだから、内密に…あと質問は最後にね」

二人が頷くのを確認して彼女は言葉を紡ぐ。

「私には前世の記憶というものがある」
「…前世」
「そう、そこで私は有名な暗殺一家の長女として生まれ、双子の弟と共に日々暗殺の技磨き、暮らしていた…。
生まれたころから毒物を摂取し、様々な拷問に耐えて生きていた。
こことは全く違う世界、海賊や海軍ではなく、ハンターと呼ばれる者たちが世界の真実を知るため世界を飛び回っていた世界に私は確かに生きていた。
私もとある暗殺の依頼でハンターの証であるハンターライセンスが必要になり、試験を受けた。
試験内容は本当に様々で楽しかった。
そこで縁あって師となる人物に様々なことを学び、まぁ生きていたんだよ」

そういってシャルは紅茶をのむ。

「ということは、お前はその前世の記憶で学んだ暗殺術を使っているということか?」

ローが眉間にしわを寄せながらそういえば、彼女はニッと笑う。

「そゆこと、私は3歳児にすべての記憶を思い出し、すぐさま毒物への耐性をつけたり、暗殺術を極めたの」

その言葉にローとコラソンは毒物を摂取する彼女の理由を理解した。

「…しかし、前世の記憶とは」
「あぁ」
「私もびっくりよ、家族、友人、師匠、恋人…全て覚えているわ」

"恋人"という単語にローがわずかに反応を示す。
それはそうだ。少なからず、彼は彼女に気があるのだから…。

「へぇ恋人いたのか!」
「えぇ…とても優しくて、強くて、私が暗殺者だと知っても特に怖がることなく接してくれた…同じ師を仰ぐ者として私たちは気が合ったわ」

コラソンは恋バナに反応し、彼女に様々なことを聞く。
シャルも懐かしそうに話す。その顔は愛しいものを思い出しているようでとても幸せそうだ。
もちろんこれが面白くないのがローである。
眉間にしわを寄せ、二人の話を聞いている。

「どうやって知り合ったんだ?」
「同じハンターを師としていてね、それでたまたま師に会ったときに出会って…」
「………おい」
「それで師匠の話で意気投合して…」
「おい!!」
「なに?」

ローの怒鳴り声に二人は話を中断してローを見る。
ローは不機嫌Maxのようで眉間にしわが寄り、完全に目が座っている。
これをみてコラソンは「ははーん」とひとり納得し、にやにやと顔をゆがませる。
だがコラソンはドジっこだ。

「ローシャルの事好きなのか!!」
「「!?」」
「え…あれ、俺声…」
「コラさんっ!!!!」

思わず声に出してしまった真実にローは顔を真っ赤にし怒鳴り、シャルはポカーンと口を開けローを見る。

「なんでコラさんはそういうことを!!」
「す、すまん!!」
「……」
「うっかりでも許さねぇ!!」

ローはコラさんの襟元をつかみ前後に思いっきり揺さぶりをかけ今までの鬱憤を晴らすように言葉を紡ぐ。
それらはすべて事実なためコラソンはただ謝るだけだった。
しかしその行動すべてがコラソンの言葉を肯定しているだけで、シャルは顔をどんどん赤らめていく。
いくら前世の記憶を持っていても女子なのだ。
少なくとも異性から好意を寄せられて嫌なものはない。
ましてや彼女は恋愛経験に関してはほとんどない。
付き合った彼とは確かに恋人関係ではあったが、彼だけなのだ。
憎悪、尊敬等はあっても好意というものはほとんどなかった。

そんな彼女に好意を持ったローの言葉はまっすぐに彼女に刺さる。
いまだにワーワーと言い合う二人にシャルは言葉をかける。

「…たら」
「「え?」」
「…ローが海賊になるときまで私の事を、そのす、好きでいて…その妖精になら、いいよ?」
「「………え…?」」

彼女の言葉をはっきりここで言おう。
簡単に言えば、ローが長い間独り身でしかも童貞であれば彼女は告白を受けるということなのだ。
少し考えた二人はそのあと絶叫する。

「おま、シャル!!それは男にとって試練に近いぞ!」
「だからこそでしょ?思春期に簡単にほかの女に手を出すぐらいなら本気じゃなかったってことでしょ?」

…先ほどまでかわいらしく頬を染めていた彼女はどこに行ったのやら…。
どやぁが付きそうなほど腕を組みコラソンに淡々と話す。
その言葉にコラソンはある意味そうだなと納得する。
人の心とは季節のように移り変わるもの。
それを危惧しての彼女の言葉はある意味正論なのだ。
ローもその言葉に納得し、条件を出してくる。

「…なら、俺が海賊になるまでお前も純潔は保て」
「…いいよ」
「キスもだめだからな!!」
「いいよ」

二人のやり取りにコラソンはそれでいいのか?と溜息を大きく吐いたのであった。