どっぺる


直感的に、ただ、暇だったから来たなどというはの言い訳なのだと思う。
自信家な彼を目の前にへえ、なんてあからさまに興味も何もないという反応をしているにも関わらず、だろう!なんて嬉しそうな表情で声は爛々と弾む。
人生を楽しんでいる。と、心底うらやましく思うのだ。

「おめっとさん」

何が、おめでとうなものか。と心の中で己を罵倒する。
近所だからと、最後の晴れ姿だと、ぜひ見に来るといい!なんて言葉に絆されて、アイスクリーム片手にビーチサンダルをすり減らしながら、見に来てしまった自分の運の悪さに。

「山神、なんだろ?」

山には愛されて、勝利には愛されなかったのだろう。
こいつに差し入れしてやろうと買ってきていたスポーツドリンクはぬるくなってしまっていて、コンビニの袋の中は水滴でべっちょりと湿っている。
声も出さずにへらり、と笑うこいつに心底

「ほんと、むかつく」

「口が悪いと男にモテんぞ」

「いいよ、別に」

「応援にきてくれていたのだろう。すまんな、山頂はとったが表彰台は無理だったようだ」

「別に、全部見ていたわけじゃないし」

瞬間、東堂の笑みが深くなりなんでも知っていると言わんばかりに口元から一寸の息が漏れたのが分かった。

「なんだよ」

「いや、三日間のどのコースでも、顔を見かけたような気がしてな」

「ドッペルゲンガーかもな、こんな凡人顔どこにでもいる」

「そうか…ドッペルゲンガーか」

「そうだよ」

「ならば残念だ。山頂をとった瞬間に見た泣き顔はなまえではないのだな」

カッと頬が熱くなるのがわかる。
少しばかり私よりも大きい影が前に来てくしゃりと汗のにおいと一緒に頭をなでられた。

私じゃないってば、という言葉を、こいつは聞いちゃいないのだ。

end
20140618

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