厩から見上げ
ふんわりと目線だけをあげて壁を見上げた。
ぼろぼろになったソレを見るたびにいつも思うのは、いつかこれも風化して壊れてしまうのだろうなという曖昧であり確実な情報。
壊れてきた箇所はすぐに修繕されているが、そんなつぎはぎがそう強いものでは無い事など分かりきっていることだろう。
ウォール・マリアを放棄してからというものその不安感はまったくと言っていいほどに晴れない。
ふうとため息を吐き出せば、馬の手綱を引いていた人類最強を掲げる男がじっと視線を投げかける。
「何か不満か」
「いえ、ちょっと怖いなあと」
思ってと苦く笑みを浮かべつつやりかけていた食べかすとなった牧草の掃除に再度手をつける。
そういえばついこないだ生まれたばかりの仔馬の様子を今日はまだ見に行っていないなと、思いつつ出来上がった草山を抱えて籠にうつした。
「お前壁の向こうに行った事は無いだろう」
「ありませんよ。兵団に入るのも怖くって。兵長殿がご帰還される度に安堵するばかりです。ああ、どうせなら上に進言してくださいませね?南端のこないだ塗り固めていた部分、それよりも上がもろくなってると思いますから」
「…その意見は自分から言いにいけ」
「こんなそうだと思いますよ理論じゃ、押しつけがましいでしょう?ああ、ほら、ハンジさんがお呼びですよ」
行った行ったとばかりに手先を払って見せればいつもよりも格段に鋭い視線で眉間に皺がよる。
不服そうな後姿を見送って籠を小屋に運び入れれば、ブルルッと明日初陣を予定している一番近くにいた若馬が大きく鼻を鳴らした。
次の日、穏やかだったウォール・ローゼにまたあの怒号が響き渡った。
私はそそくさと馬たちと共に非難し、ただただ耳を塞ぐ。
やっぱりあの部分がもろくなってたんだなんて、私は他人事の様に友人の無事を待ちわびるのだ。
end
20130621
[
back]