つまらない白に刺激の赤


無星の彼女は、毎日同じ寂れた地域のぼろぼろの窓枠に頭をもたげていた。
漏れ出る溜息は、とても甘美に見えるだろう。
長い睫を伏せ、長い四肢をけだるげに投げ出し、先程まで読む気のあった教科書も今は固い布団の上で変な部分に折り目をつけている。

「いい、なあ」

飛び立つ雀に向かって嘆く声が聞こえた家の近くを通りかかった者は、はた、とその場に立ち止まる。
とても心地よい音が耳に入った気がすると、次の句が直に発せられることを期待する。
しかし当の本人にはそれ以上口を開く事はなく、着なれて教科書の様に少し変な皺のついた制服に腕を通しその場からよっこらせとばかりに体を動かすのだ。
天気は快晴である。
のんびりゆったりと登校していく周りに学生らしき姿はまばらではあるのだが、それは時間としてまだ早朝なのがその理由に当てはまるだろう。
きちんと日光に当たって生活をしているのか怪しみたくなる程白い肌に不意に影がかかった。

「おはようございます。蝦蟇郡先輩」

「おはようみょうじ今日も早いな」

「通学ラッシュは好きではないもので」

ぎゅうぎゅうに押しつまるあの感じがどうにも我慢できないのだとばかりに表情をゆがめてみせた彼女は、倍以上も体格差のある男に小さく一礼する。
美女と野獣か、と誰かが思ったがその美女もだれに見られても構わないとばかりに大きな欠伸をしながら校舎へと足をすすめていった。
無星の教室はぼろぼろで、甲組はどんよりと空気は淀む。
ああ、何かあるなと彼女は思い、ぽっかりと空いた前の席を見ながら頬杖をついて瞼を傾かせた。
この席は、生徒会にたてつき、学園に居る事すらできなくなったばかりの女子生徒の席である。

がらりと扉が開いて現れた紺色の髪に赤い毛束の映える女子を見て。
彼女は、数年ぶりににっこりと楽しそうに笑うのだった。

end
20140326

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