今の彼と、私


個性、というものを特別視したことはない。
それは、私の個性が「よくある」ものであったからだろう。

「かっちゃんと#name#ちゃんは、僕の自慢の友達だよ」

そう言っていた幼馴染のあの子は、かっちゃんと共にかの有名な学校へ進学していった。
ぽけ、と教室の特等席から外を見ていれば、今日は風が強いのか上空の雲はするすると流れる様に移り変わっていく。
この時間が幼いころから大好きなのだけれど、このせいでぼーっとしている子と認定されることは簡単に想像ができただろう。
わいのわいのと騒がしい教室がドアのひらく音で静まり、担任の声に、号令に、きちりと従う。
にぎやかで、ざわついて、それでいて統率のとれたその空間。
HR中の本日の連絡はなんだろう、かすかな音すらも耳には入ってこない。

「#name#?音楽室行かないの?」

不意に後方から聞こえてきた声に振り返れば、音楽の教科書を持った友人が少しあきれた様な表情を浮かべてこちらを見ていた。
あわてて鞄から薄っぺらい音楽の教科書を取り出して左手で中学の時から使い込んでいる布の筆箱を握りしめる。
指の間に、筆箱の中で丸くなった消しゴムがころりと転がった気がした。

「どうだった?今日は」

なんでもない会話の様に彼女は、毎日それを聞く。

「ん、楽しそうだった」

私の個性は、「遠距離目視」。
見えてくる教室の彼は、あの頃よりも楽しそうに毎日を過ごしている。

end
20161029

prev 

[back]


ALICE+