一年の始め
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新しい教室に入って、まず目についた毎朝のセットできちんと外にはねた髪に後ろからおはようございますと頭を下げた。

「また、同じみたいだな」

「はい」

これで幼稚舎から合わせて調度十年目。
同じ室内で学ばない日は無いのだから、よろしくお願いしますもへったくれも無いだろう。
周囲からの好機な視線も無く、ただ当たり前に私は彼と同じクラスになりまた当たり前に指示を受ける。
今年で義務教育が終わる。
両親の金銭的な面を考えて公立高校への進学を視野に入れている私にとって、本年度が彼と関わる最後の年になるだろう。
これで、跡部景吾との輪廻が断ち切れればと願って仕方ない。

「持ち上がり新入生は今日から部活に来る。全員の名前と利き手をリストにして明日までにあげろ」

「かしこまりました」

「あと、このクラスに宍戸もいるから挨拶ぐらいしてこい」

「宍戸さんには、先ほど玄関ホームでご挨拶させていただきました」

私の言葉が気にくわなかったのかフンと鼻を鳴らす跡部は、肘をついて私を睨むように細めた瞳をこちらに向ける。
頭を下げて、仕方ないと足をすでに席に座っていた宍戸の側まで行けば何用だとばかりに目線を向けられる。
敵意はありませんとばかりに無意識な笑顔が浮かんだ。

「本年もよろしくお願い致します。宍戸さん」

「さっき言って…ああ、跡部か」

ちらりと目線を平行に揺らした宍戸が、一定位置を見てすぐに納得する。
彼の口癖である激ダサだなという言葉すら出ないあたり、もうこれ以上私との会話を続けさせる気などないのだろう。
跡部に対するものよりも軽く、頭を下げて自分の席に向かって歩き進める。
途中、もう私に興味もなくなった跡部が視線も合わせなくなっていた事から少しは彼の機嫌も良くなったのだろうなと腰を落としながら息を吐き出した。

彼のご機嫌とりも今年で最後だ。

私は鞄からルーズリーフを取り出し、氏名と利き手の文字の間にボールペンで亀裂を走らせた。

end
20120921

宍戸さんが出張った気もします。
跡部とヒロインの十年連続同じクラスネタですが、私は二クラスしか無いのに十年間同じクラスにならなかった幼なじみがいたのでネタにしてみました。
跡部とヒロインは幼稚舎からですが
素っ気なくというリクエストに答えられているでしょうか。
しかし、この話で少し今後が見えるかなと複線化できた気もします。
Thanks request 不知火様!


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