ここのところ、自分の趣味は充実している。
いつから始めたのだか何冊かになるノートには、日記紛いの人間観察による分析結果が事細かに記され多分他人が見たら変人というレッテルをべたりと貼り付けられてしまうだろう。
所詮自己満足、自分が見てまとめて楽しむだけのノートだ。
少し前までは、あの教科の先生はあの子に甘いなどというなんともつまらない観察記録だったが最近は違う。
特に彼、鉢屋三郎という男が転校してきてからのこのクラスは本当に観察のしがいがある。
まずは、鉢屋三郎についての見解を自分なりにまとめる。
彼はとても友好的でいい人だ。
顔もいいし勉強もできるし背もある、テニス部に入っての運動能力はどうやらレギュラーに肩を並べられるらしく同じ教室で隣に並ぶ跡部がいつもより楽しそうにしていた。
当然、彼はモテる。
転校してきてすぐに2つ隣のクラスの女の子に告白され、ついこの間街中で高校生だろうお姉さんからお誘いを受けているのを見かけた。
しかしどれもこれも嫌な気さえ起こさせない所作でスルリと受け流してしまうのだから尊敬に値する。
慣れているのかもしれないが、遊び人というわけでもないようだ。
そんな彼がたまにちらちらと視線を送るのは、クラスでも目立って目立たないみょうじさん。
目立って目立たないというのは、矛盾と受け取られるかもしれないがそのままだ。
情報としては、みょうじさんは小さい時から跡部の世話係みたいにそばにいる。メイドさん?と誰もが思ったが彼女の家は普通の何の変哲もない花屋。
見た目も普通、静かで誰の頼みも聞いて、そしてなんでもそつなくこなしてしまう。
幼稚舎から知っている人の話では、背中に大きな傷があってそれが生まれた時からあるらしいともある。
どんなにいじめられても怪我をしても刃向かわない鉄仮面。
しかし、跡部という存在があるからこそ彼女はそんな話が無くとも目立った。
地味派手という言葉が正しいのかもしれない。
そんな彼女にバレないように鉢屋が目線を向けているのをクラスの大半が目撃している。
ただ無表情に見て、目についただけと言わんばかりに逸らす。
クラスの大半が目撃しているのだから、もちろん他のクラスの人間も何人かはこの視線を知っている。
その一人が、ライバルの名字さんという可愛くて愛想がいい子。
彼女は鉢屋が好きだ。
もう、わかりやすいほどに彼に話しかけテニス部を見に行くライバルの名字さんは本当に微笑ましい。
小さな背でフェンスにつかまって鉢屋の姿を必死に見ようする様など目撃した日には、想われている鉢屋が羨ましくて舌打ちをかましたくなる程だ。
「くっそー…なんでイケメンばっかに」
「ライバルの名字さんかわいいわーあんな純粋に想われてえ」
友人らは、よくそんな愚痴をこぼす。
友人ら曰わく、ライバルの名字さんが鉢屋に告白したらもうカップル成立だろうつまらない。らしい。
いつもならば自分と同じような結論を出す友人らとこの部分に関しては異論を唱える。
「鉢屋は、みょうじさんだろ?」
みょうじさんを見て気にしている鉢屋。
鉢屋がみょうじさんを見ている事を知っている鉢屋に恋するライバルの名字さん。
みょうじさんとライバルの名字さんはテニス部関連で繋がりがあるとくれば、泥沼か青春映画の1ページ展開が期待できた。
昨日からテニス部は合宿で学校に居ない。
本来ならば観察対象のいない学校はつまらないものだが、内心はわくわくと想像が止まらなかった。
同じクラスの跡部や宍戸が混ざり込むか、他校と何か起こるかもしれない。
頭の中は思春期の女の子のごとく華やかに話が回った。
帰ってきたら関係がどうなっているのか、本当に楽しくてたまらない。
end
20120906
クラスメート視点による独白でした。
一人称をいれず男の子のつもりで書きましたがこれは書いていて楽しかったです。
ヒロインも鉢屋を見ている時がありますが、それに関してクラスメートくんは気づいていません。
観察力はあるのに惜しいんです。
席は廊下側の一番後ろなんてどうでしょうか
Thanks request 白金葵様![
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