眠るきみに秘密の愛を
付けていた眼鏡を外し、少しべたつく髪の毛を手拭いで拭う。
馬はかわいいと思うが、どうも苦手だ。
「薬研、馬当番だったのかい」
「ああ、いち兄。またやられちまった」
この通りだと見せてみればくすりと口元で笑ってみせる兄は、先程遠征から帰って大将に報告をしに行ったところであるらしい。
腕には、くったりと寝息を立てる前田がいる。
自分も馬当番が終わったことを告げねばと思ったが、曰く大将は昨日あった審神者の定期集会で帰ったのが深夜に及び、疲れの所為か筆を片手に寝息を立てているのだという。
起こすのも忍びないからと、拾った土産の資材と誉桜をひとつ側に置いてきたと話す兄は、近侍である前田も側で寝こけていたためこちらだけ回収したらしい。
「お前も、主を起こさないように」
「ああ」
白衣で眼鏡のレンズをふき取り、視界をはっきりとさせてから大将の部屋へと向かう。
奥まった場所にあるその部屋は、「もしも」の時の為のもっとも安全な場所。
縁側に向いた障子は開け放たれており、春の情景から暖かな風が室内に舞い込み心地よいのだろう。
覗き込んだ先には、思っていたよりも気の抜けた顔でべたりと机に頬をへばりつける大将がそこにいた。
報告書なのだろうか、まだ一行目もかけていない紙には、持ったままの筆から落ちた墨が見える。
これは書き直しとなるだろう。
脇に置かれていた、木炭と誉桜を横目にゆっくりと大将の寝息が聞こえる位置まで近づき、目元にかかっていた自分と同じ黒髪をなでた。
「気ぃ抜きすぎだぜ大将」
映えるに違いないほのかに色づいた誉桜に唇を落とし、そのなでたつややかな黒髪に添える。
次は、自分の獲得したものをささげようと
end
20150522