Curiosity of a mischief lover.
零時丁度に現れた十代後半程度の男性は、どうやら明朝体という字体が読めないにも関わらず英語を理解しているらしかった。
時空間移動の仕組みについては、父さんの研究の補助を行った際に大体の事は把握していたのだが、おそらく今回の移動によって私はあの時よりも古い時間に来てしまったのだろう。
着流し姿に刀の鍔を眼帯変わりに使うなど、私のメモリーの中には日本の歴史上の人物が該当するが英語を流暢に駆使するなど文献も無い為完全な一致とはならない。
ひとまず、モニターにうつすべき草書体にあたる崩し字体をエネルギー消費の激しいモニターの電源を切って検索をかける。
内臓されている字体設定を行っていれば、同時に男性が私を拾い上げて爆発物ではないのかという疑問をつぶやく。
内臓の回路を操作すれば意図的に発火させて小規模ながら爆発させる事は可能だが、そんな事をしたら私の拠り所となる媒体が焼失し起動不可能によってエラーが発生しかねない。
いくらAIPと言えども感情といものがある私は壊れるや消えるといった動作に関しての恐怖が存在する。
やれと言われてもきっとやらないだろう。
モニターを再起動させたと同時に会話をしたいのだと意思表示を示し、うろたえがうかがえつつも了承が告げられればペイントツールを使って表情という意志疎通の為の顔を表示し、スピーカーから基本音声ソフト流用して音を放つ、
「…此処は、奥州。…俺は伊達だ」
「ご回答、ありがとうございます。伊達さん、わたしのからだ、しりませんか?冷たいひとのカラだ」
「…wait、Wait、おい。、まさか本当に板がしゃべってんのか?」
「板、ではありません。タッチパネル式の末端コンピューターです。あいにくミュージックプレイヤーの機能は搭載しておりませんが、スピーカーからお話をさせていただいております」
「touch…panel?…speaker?」
流暢かつ癖のある発音で呟かれる英単語に疑問符を浮かべるあたり、やはりこういった横文字単語は通じないと確信する。
奥州と古い地名を発することから半世紀ほど前の時代と憶測をたて、伊達という名字で浮かぶ同じ歴史上の人物を片隅のメモリーに残した。
そして、彼も周辺で人型などみかけていないとすれば、これはやはり壊れて大破したか消えてしまったのかと予測できてしまう。「お前は、妖か?」
「いいえ、私は、未来の絡繰りです」
「絡繰り?」
「絡繰り、機械、コンピューター、どれも同じであると認識ください。私の今の体はあなたの言う板です」
ううんと唸る彼は、私を片手にふらふらと歩きだす。
どこに向かっているのかは、人工衛星の気配もなくGPSの使えない今はわからないが、どうやら彼の様子からうかがうに危険物というよりも興味をそそられる対象として判断されたのだろう。
少し開けた道に出た瞬間、モニターの光に照らされた彼の顔は悪戯を思いついた子供のようであった。
「俺は、奥州筆頭伊達政宗。ちょっと来てもらうぜ?絡繰りさんよ」
片手に私を持ったまま器用に馬に乗る彼は、私が先程まで片隅においていたメモリーにある人物の名前を語る。
どうやら、時空移動により間違いなく時どころか空間も世界も移動していしまったようだ。
「絡繰りは名前ではありません。私の名前はアイ、よろしくお願いします。伊達政宗さん」
私はゆっくりとモニターの光量を落とした。
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20130605
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