two
ぽてり、とした唇。桃色に染まった頬。ミルクティブラウンのふわふわと巻かれた髪。睫は空を向きシャドウとラインで目元をぱっちりと強調。
爪は長めに整ったそれを、くるりと髪に絡める。
女性としての色を纏い、自らを極めていく姿は純粋であり艶めかしい。
「ねえ、佐助」
教室の片隅。イヤフォンを片耳につけたままヘアバンドをあげつつ目線は下げる。
話しかけられたとて興味が無いと、暗にそう雰囲気が語っていたが彼は別段話しかけてきた女を拒絶も無碍にもしない。
「んー」
「なんか最近みょうじさんの事すっごいかまってんじゃん」
「そうだねー」
「なんで?まさか本気で惚れた?」
「いいや?」
否定の言葉に顔を持ち上げてきょとりとする彼に、周囲の彼へ気持ちを寄せる花からホッと安堵の息が漏れる。
先日、彼から興味を持たれた女生徒をほとんどのものが居たような気がする程度にしか認識していなかった。
目立たず、喋らず、生真面目で孤独。
いつも長く伸ばされた前髪を、教員から邪魔になるから切るか纏めるかしなさいと言われていたというのを数人が目撃した。…、ような気がする。
それほどまでに、彼女は誰の記憶にも残らなかった。
そんな彼女が有名になったのは、確実に彼からのアプローチにある。
唐突に火蓋をきられたそれに、何人の者が疑惑を嘘だと口にしただろう。
それが杞憂でしかないのだと、彼女らは胸をなで下ろした。
「ずっと前から好きだけど?」
紡がれた言葉に、数人が目を見開く。
当然じゃないか。とでも言いたげに少しはにかむ彼の表情は、とても柔らかい。
胸を落ち着けたばかりの者の中には、泣き出しそうに表情が歪む者まで現れるが、柔らかい反面牽制も込められているのが手にとるようにわかる彼の笑顔がそれを逆にひきつらせてしまう。
「ああ、あれ俺様のだから。誰にもあげないよ」
彼の笑顔は相変わらず作られたように綺麗に目に止まり、何人かのごくりと喉を鳴らす音だ妙に響いたのだった。
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20120724
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