three


毎日、毎日。それも1日一回など生ぬるく感じる程に、猿飛は飽きることなく彼女に話しかけ続けた。
廊下ですれ違う度、猿飛自ら出向いて、帰り際、朝通学途中。
場所など、人目などまったく関係無いように猿飛の声はなまえの耳に常に届く。

「みょうじさん」

「みょうじちゃん」

「なまえちゃん」

短期間で移り変わっていく呼称に、今まで関係のなかった彼女自身ついていけるわけもなく反応もそれはそれは薄いものしか出す事はなかった。

「なまえちゃん、おはよ」

「…お、…はようございます…」

そんな彼女の反応すら気にする気配も無い猿飛の神経は、よほど図太い。
否、図太いと言うよりも当たり前なのだと受け入れているようにしか思えず、なまえが猿飛を拒絶せず挨拶を返すまでになれた事の方が不思議に思えてきてしまう。

「ねえ、みょうじさんさ。佐助になにしたの?」

人通りの少ない廊下の一角。
迫り来る数人に肩をびくりとふるわせたなまえは、俯いたまま彼女らの言葉を聞いた。
なにもしていない。という小さく掠れた言葉は、彼女らにしたら挑発的に聞こえてしまったらしく納得の声などあがらない。
猿飛がなまえを構うようになってから彼女らへの猿飛の態度が変わったようで、彼女らはそれがどうも腹立たしいようだ。

「うっざい」

軽快なパシンという音を頬に受け止めたなまえの顔が跳ねる。
痛みで滲みそうになる目元をおさえ、吐き捨てられるようになまえに向かって次はないと言葉が続いた。

「ねえ、今。なまえちゃんになにしたの?」

反動でよろつくなまえがその場を離れてから満足げな少女らに投げかけられたのは、後ろからの射殺しそうな視線と冷たく軽快な言葉。


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20120725


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