six
周囲がなまえと猿飛との間に壁を作り始めて一週間。
視線の変化以外特に代わり映えしないと感じているなまえの隣には、当たり前のように猿飛が座っていた。
昼休みであるが故にまったく問題は無いが、彼のそばに居た人たちはどこへ?という疑問だけをなまえは持ちつつ黙々と弁当に箸をすすめる。
関わり合いにならないように、と考えて避けたものの遭遇率に変化はなく寧ろ増加している事にいつ報復がくるかとなまえは怯えていたが未だに呼び出しも嫌がらせの一つも降りかかってきてはいない。
そんななまえの思案をよそに猿飛は、にこにこと笑みを浮かべたまま総菜パンを口に運び時たまなまえの弁当箱の中身を美味しそうだと誉めた。
「ねえ、なまえちゃん。俺様そろそろいいかなって思うんだけど」
「…なにが、ですか?」
きょとんとするなまえを見て、困った様に眉を八の字に垂らして笑う猿飛は右手でなまえの顎を優しく持ち上げる。
「俺様とお付き合い、しない?」
長い前髪に隠れた目をくりんと丸くしたなまえを見て、息を吐き出して笑い出す猿飛。
ああ、ごめんごめんでも本気と続ける猿飛に対してなまえはそのまま顔を見る間に真っ赤に変化させる。
手元から箸がこぼれ落ち、慌てて拾い上げて洗ってきますと教室をあとにした。
勢いよく出る水道からの水で簡単に箸を洗いながら、先ほどの台詞をなまえは思い返していた。
お友達になりたい宣言からまだひと月もたっていない、のになんて身の振りの速さだと相変わらずの軽さに苦笑いが浮かぶ。
ん?となまえは少し自分の思考を繰り返す。
相変わらずの軽さ、とはどういう事だろうかと首を傾ける。
『俺様とお付き合いしよっか』
聞いた事のある台詞だと思うのだが、どうにも靄がかかって仕方ない。
しかし、こんな台詞をほいほい言われる人間では無いと自分で自覚しているが故の異質感。
「なまえちゃん?いつまでお箸洗うつもり?」
昼休み無くなるよという後方からの囁きに肩が跳ね上がった。
振り返って見る猿飛に何かがぶれるように重なり、ふと瞬間的に唇が言葉を紡ぎそれを聞いた猿飛がぼろぼろと涙をこぼし出すのだ。
「さっ…ちゃん…」
あ。と、思い出したのは過去の記憶。
続けて背中に走る猿飛からの歓喜に満ちた狂った視線。
そらせない目が、伸びる手を避けろと脳に叫んだ。
『にげろ、ばれるまえに』
逃げ出した筈なのに、繰り返す。
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20120728
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