舌に残ったざらつく苦み


熱が上がって、冷却シートももうぬるく粘着力が限界までなくなったのかぺろりと床に落ちた。

「あれ、死んじゃう?」

もうなんでもいいから体を休めたいので眠らせてくれないだろうか。というのが正直なところ本音だ。
家の前に現れた青年を睨み付けてから、その場で言われた戦乱の世だの武田信玄だの甲斐がどうのこうの
社会科が苦手な私には、とりあえず何百年前の話だと言うしかできず目を見開く彼とは違いふらりとその場に崩れ落ちてしまった。
甲斐てどこだ。
昔の地名のようだが、私は地元四国四県の昔の名前ぐらいしか知らない。
九州の方?関東?北海道は蝦夷よね。戦国って何時代の事?江戸より前?なあんてぼんやり考えをめぐらせるのもすぐに放棄して、目に見えてオロオロしている青年に鍵を渡して開けてもらいソファまで運んでもらった。

「あのさ。アンタ、俺様が言うのもなんだけど危機感無いね」

「そっすね…」

「…仕方ないから看病してあげる。薬どこ?」

ふらふらと指先を棚に向ければ、青年は気にせずに今朝出したままにしていた風邪薬の箱を見て眉間に皺を寄せたまま、これ?と確認してくる。
書いてあるだろうなどと言い返す元気も無く、頷いて受け取り水も何も無いまま唾液だけで飲み込んだ。
舌に残る苦味がなんとも口当たり悪く、少し目が覚めた。

「とりあえず、何?話でしたっけ?」

「そんなしんどいですって体制で聞かれるのもなんか苛つくから今日は寝たら?」

「優しいっすね」

どういたしまして。という嫌みを含んだ声が聞こえた気がしたが、意識は微睡みすぐ夢の中へと引きずり込まれる。
ソファで寝たら腰と首が大変な事になる、だとか心配する余裕も一切無い。

警戒してる俺様バカみたい

なんて声が聞こえた気がした。


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20120914

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