健康的に太りました


順応性が高いですね。

「名前ちゃん!朝!仕事!」

「今何時?!」

不可思議な同棲生活が始まって一週間がたとうとしていた。
猿飛さんから呼び方が佐助さんに変わり、佐助さんからも名字さんから名前ちゃんに変わる。
それ程に馴染みだした日常は、極めて健康的だ。
男性一人が住むとして、普通ならば何か買い出しなど必要かもしれないが私も最近まで彼氏が居た身。
貧乏性な私がそれを捨ててしまえるわけもなく、男サイズのTシャツもズボンも歯ブラシの予備、下着の予備も全部ある。
布団だけは、冬の布団と母が泊まりに来る時だけ使う布団を引っ張り出したが眠れるのだから問題はまったくない。
お洒落服を佐助さんに買い与える必要は無い。
何せ私のサイズのボトムスやTシャツが入るのだ。
私の鍛えた腕や肩が太いのか、佐助さんが細いのかわからないが無駄な出費はなく佐助さんも文句は言わない。
唯一めんどくさいと言えば着替えの度にユニットバスまで行かなければならない事だろう。
申し訳ないが一人暮らしで二部屋なんて贅沢できる程稼いではいない。

起こされて見た時計は、余裕のある7時。
今日の現場の入り時間は8時半だからまだゆっくり準備ができる。
かと言って二度寝はできない、佐助さんが許してくれない。

私が使わないのにちょっと髪を上げる事に憧れて買ったヘアバンドを付けこなし、部屋の真ん中の小さなテーブルに二人分の朝ご飯が並ぶ。
白いご飯に、おばあちゃんが送られてきた沢庵、豆腐の味噌汁、鮭の切り身。
大好きな日本食に、顔を洗い歯磨きついでに着替えを終えた私は綻ぶ表情のまま座布団に座る。
すぐに佐助さんが、麦茶の入ったコップを持ってきて前に座った。

「この沢庵本当に美味しいよね」

「でしょー。うちのおばあちゃん梅干し作るのもうまいよ」

一週間前に刃物を突きつけられた間柄であるとは思えない程の雰囲気に、佐助も以前ほどのぴりぴりした感覚は無い。
朝のニュースを見ながら落ち着いた朝ご飯を食べ、整えているだけの眉だけを更にアイブロウで描いて荷物を持つ。

「佐助さん今日の晩御飯は?」

「今日は、鍋。明日休みなんでしょ?お酒買ってきたら飲んでもいいよ」

わーいと返せば、子供じゃないんだからと苦笑いを返される。

職場で上司から「お前最近太ったよな」なんて言葉を聞いても気にならないほど健康的。


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20120920

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