しとしとぴっちゃん
「そのままでは風邪をひきます」
梅雨に入ったのか、毎日馬鹿みたいに降り続ける雨の中で馴染むような蒼が鈍色の空を見上げる。
傘で遮られた視界から、伏せた目には少しばかりの疲労が見えた。
「ひかねえ、すぐ帰る」
「片倉様がお待ちですので私と帰りましょう」
「just moment、もう少ししたら帰る」
ちょっと待ってくれ。と続ける口は、自ら体ごと雨の中へと一歩を進める。
疲れているのだろう、こうも毎日毎日雨ばかりでは気が滅入るのも理解できた。
「甲斐の若子からの文と土産があるのですが、食べませんか?」
「Ah、猿か」
「ええ、なんでも甲斐の若子も政宗様と同じように戦えぬのが悔しいようで。雨が上がり次第お手合わせをと」
もしかしたら彼は、政宗と同じように雨の中立ち尽くし何かを大きく叫ぶなりして部下の忍に注意でもされているかもしれない。
どうやら同じ事を想像したらしい政宗がぶっと吹き出すように口端を上げ、災難だ。と忍に対する嫌みをこぼす。
「土産は何だ」
「砂糖羊羹だそうですよ」
「いいねえ。なまえ茶はこないだの玉露だ、You see?」
「かしこまりました」
傘に入っ顔の雨を拭いつつまだ想像が止まらないのか、喉を鳴らす政宗は歩みを進める。
「きっと城ん中あちこち壊されてんぞ。ざまあねえなー」
「甲斐の若子は、己の城を壊すのですか?」
「なまえは知らねえんだったな。壊すぞ。で、直すのが猿だ」
かわいそうに、今度来たら甲斐の忍には茶の一つでも出して労いをかけてやろうと考えていれば、隣の政宗から忍が出したもん口にするわけないだろうとため息を吐かれた。
そんなにもわかりやすい思考だっただろうかと首を捻れば、手に持っていた傘を奪いとられてしまう。
「政宗様。私が持ちます」
「なまえの持つ位置じゃ低くて歩きにくい。これでいいじゃねえか」
男女差があるのだから、仕方ないとはいえ主君に持たせてしまうのは気が引ける。
しかし、一度言えば撤回しないのが彼だ。
渋々と傘に伸ばしていた手を引っ込めて城までの道を歩む中、雨は変わらぬ強さで傘と地面を打ち暑くなってきたはずの空気をひんやりとさせる。
心地よさと逆に足元の泥の不愉快さが混雑して早く草履を脱ぎたくなった。
「政宗様」
「…?」
「砂糖羊羹をお召し上がりになりましたら、執務の残りをどうかお早めに片付けくださいませね」
おう、しっと。
そんな声を聞き流し朝顔の咲く道なりを今日も今日とてお供致します。
砂糖羊羹の甘い匂いはまだ遠い
end
20120618
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東間様より「筆頭でほのぼの」
季節ネタをいれさせていただきました。
政宗様と政宗付きの女中ヒロイン[
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