夜の静けさが部屋を包んでいた。
外では風が木々を揺らし、カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる。
#name#は僕の胸のあたりに頬を寄せ、しばらく黙ったまま呼吸を整えていた。

その指先が、そっと僕の服の裾を掴む。
「……総司」
小さな声が、夜の空気に溶けた。

「どうしたの?」と尋ねると、#name#はほんの少し顔を上げた。
その瞳はどこか切なげで、けれどまっすぐに僕を見ていた。

『私ね、ずっと思ってたの。
私と未来を歩もうとしてくれる総司に、どれだけの負担をかけているんだろうって。
専属騎士の仕事だけでも大変なのに、公務のことまで学ばなくちゃいけなくて……本当に、申し訳ないなって』

少し俯いて、言葉を選ぶように唇を噛む。
その仕草があまりにいじらしくて、胸の奥が静かに熱くなった。

『それでも総司は、どんな時も前を向いて努力してくれる。
私の隣に立てるようにって言ってくれて……それが本当に嬉しいの。
だからね、私も総司のためにできることを全部したい。
どんなことでも支えたい。
だって……総司がいるから、私はこの立場で頑張れるの』

言葉の終わりと同時に、彼女の声が小さく震えた。
その震えがまるで僕の胸の奥に直接触れてくるようで、どうしても堪えきれなかった。

「……#name#」
彼女の名を呼ぶと、#name#は小さく瞬きをして僕を見上げた。

もう何も言えなかった。
ただ、その愛しさに押されるように、腕を伸ばして抱き寄せる。
柔らかな髪が頬をかすめ、細い体が僕の胸にすっぽりと収まった。

「……ありがとう。そんなふうに思ってくれるだけで、僕はもう十分だよ」
彼女の髪に顔を埋めながら、静かに言葉を落とす。

「でもね、#name#。僕は君のために努力してるつもりなんかじゃないんだ。
君と生きていきたいから、今の僕が自然にそうしてるだけなんだよ」

そう言って、少し顔を離すと、#name#は目を潤ませたまま、かすかに笑った。
その笑みがあまりに優しくて、また抱きしめずにはいられなかった。

彼女の肩越しに、月の光が静かに揺れていた。
このぬくもりを失わないためなら、どんな苦しみも恐れない――
心の奥で、もう一度強くそう誓った。


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