魂を回収する為、夜のイギリスの街を歩いていたロナルド。
「お止めになって下さい!」
ガラの悪い男達に絡まれているレディに遭遇した。
「レディに嫌がる事はしちゃいけないんスよ」
「何だこの男!やるのか?」
数秒のうちにガラの悪い男達はロナルドにボコボコにされ、逃げて行った。
「助けて下さって、ありがとうございます」
レディはお礼を言う。
「こんな時間にレディの一人歩きは危ないよ?良かったら家まで送ってくよ。あ、俺もさっきの奴らみたいにやましくないから安心して!マジで!」
レディはロナルドを信用した。
「では、お言葉に甘えて」
「なんで君みたいなレディが夜に一人歩きしてんの?危ないよ」
「危険なのは分かっていますわ。でも夜の街がどのようなものか見ておきたかったので」
話し方とか仕草とか身なりとか絶対超箱入りお嬢様だ。
ロナルドはそう思った。
予想通り、豪華なお屋敷。
「見ず知らずのわたくしを送って下さって、ありがとうございます」
レディはぺこりとお辞儀をした。
「いえいえ、俺も暇だったし。…これ、俺の名刺!じゃーね」
ロナルドは名刺を渡し、ウインクをしその場を去った。
『死神派遣協会
ロナルド・ノックス』
そして連絡先も書いてあった。
死神…?名刺をまじまじと見てレディは、あの方はコメディアンかしら?と、思った。
数日後、レディは半信半疑で連絡先に電話をした。
「はい、こちら死神派遣協会のロナルド・ノックスです」
「いや〜驚いちゃったよ!君から連絡貰えるなんて!」
昼下がりのカフェにロナルドとレディは居た。
「死神なんて御冗談かと思いましたわ」
「本当だって!先輩に7・3分けの頭堅い死神とかオカマの死神とかいんだよ?」
クスクス…
レディは笑った。
「あ、君今笑った」
「だって、面白いんですもの」
レディの名はマリア。
やっぱり超箱入りお嬢様だった。
「超気になってたんだけど、この間『夜の街を見ておきたかった』とか言ってたじゃん?やっぱ箱入りお嬢様は夜とか出歩かないの?パーティーとかも行かない系?」
「えぇ。わたくしは夜会も出席した事ありませんし、外に出た事も殆どありませんわ」
「え!?マジ!?今も俺と会っちゃってるけどヤバくない?」
「きっとお屋敷中大騒ぎですわね。でも、一日中つまらなくて…もうすぐ結婚しますし、今のうちに色々なものを見ておきたいの」
「結婚?!」
「えぇ。幼い頃から幼なじみの婚約者がおりまして…」
マリアは決められた事を毎日淡々とこなす事には飽き、決められた道を歩く事は嫌だった。
しかし無力。どうにもできない。
幼ない頃から家庭教室と勉強、レディとしてのマナー、楽器のレッスン。
毎日同じ事の繰り返し、好きではない相手との婚約。
たまに家族と外を歩けば、同世代の女の子達は楽しそうに学校に通って居たり、恋人や友達と歩いて居たり、羨ましくて仕方がなかったと言う。
“まるでわたくしは鳥籠に閉じ込められ、自由に飛べない鳥のよう”
マリアはそう言った。
「…ごめんなさい。長々と個人的な事をお話してしまって」
「いや、全然気にしないで!」
「ありがとうございます。話せるお友達も居ないからついつい長話になってしまいましたわ」
「よかったらさ、また会わない?」
それからロナルドとマリアは会うようになった。
ロナルドは、マリアをオシャレなバーやレストラン、ライブハウス、コンサートに連れて行った。
「楽しいですわね。こんなに面白い場所がたくさんあるなんてわたくし、今までずっと存じ上げませんでしたわ。ありがとうロナルド様」
「喜んでいただけで光栄です。」
それから1ヶ月程経ってまた二人は会って居た。
二人は高い建物からイギリスの夜景を眺めて居る。
「とっても素敵…すごーく綺麗ですわね!」
「めっちゃ綺麗でしょ?ここ俺の絶景スポット」
「ふふ…宝石みたいですわ」
「ねぇ、マリアちゃん、合コンって知ってる?」
「存じ上げませんわ」
「だーよーね。知るワケないか。まぁ簡単に言うと男と女が同じ人数集まってワイワイやって食事したり酒飲むんだよ」
「楽しそうですわね」
「…前まで面白かったし、楽しかったけど、今は微妙…っつーか最近全然行ってない」
「どうしてですの?」
「マリアちゃんと一緒に居る方が楽しいから」
「え…?」
「俺…マリアちゃんの事好きになっちゃった。これからもマリアちゃんに色んなモン見せたいなぁ」
沈黙が続く。
「ロナルド様、ごめんなさい。わたくしもう貴方にはお会いできません。」
「何で?」
「明日…結婚するから。ロナルド様にお会いして、ロナルド様に色々な場所に連れて行っていただいて楽しかった。本当にありがとうございました。わたくし、ロナルド様の事一生忘れません」
涙を流すマリア。
え?ちょっと待ってよ。そりゃなくない?
俺マリアちゃんの事好きになっちゃったんだけど?
沈黙、微妙な空気のままロナルドはマリアをお屋敷に送った。
さようなら、ロナルド様。
マリアはロナルドの背中を見ながら再び涙した。
次の日。
挙式が始まり、教会のバージンロードを父親と歩くマリア。
そしてマリアは花婿の元へ…
その瞬間、バタン!と教会の扉が勢いよく開く。
息を切らしたロナルドは、マリアの手を取る。
「行こう!マリアちゃん!」
教会からロナルドとマリアは走り出す。
どれ位走っただろう。
「ここまで逃げたなら大丈夫でしょ」
「ロナルド様、どうして…?」
「昨日言ったじゃん?マリアちゃんの事好きになっちゃった。って」
「ロナルド様…」
マリアは涙を浮かべる。
「わたくしも、ロナルド様の事が好きです。ロナルド様とご一緒にもっともっと色々な景色を見たいです」
「じゃあ決まり!これからも俺がマリアちゃんに色んなモン見せるから一緒に楽しもう!…それにこんな綺麗な花嫁さんの隣歩いていいのは俺だけだから!」
嬉し涙を流しながら笑うマリア。
わたしを鳥籠から出してくれた騎士(ナイト)は死神さん。
ありがとう。