俺は槍なんかより脇差や短刀との方が話が合うんだ。それは審神者も皆も知っている。だから俺は今日も内番が終わり次第、博多と本を読もうとしていた。ーーなのに
「なぁんでこんな事になっちまったかなぁ…」
「御手杵さん、どうしたんですか?」
結局あの後、逃げる為に脇差達の部屋に籠もっていたらそこでなまえと薬研に会い、そのまま捕まってしまった。にっかりは含み笑いをしていたし、堀川はなまえと仲良く話をしていた。この隙にまた逃げようとしたのだが、嬉しそうに堀川と笑っていたなまえが振り向き、「御手杵さん、何処行くんですか?俺もう少し御手杵さんと話がしたいんです」そう言ってジャージの襟を掴まれた。そして引っ張られた先は槍部屋。どうして部屋を知っているのか聞けば、薬研に教えて貰ったと言う。最初は岩融と居たらしいが、部屋を回る前に昼飯を食べたので、じゃあ俺っちが教えてやると言われた。とのこと。
脇差と比べれば広く高い部屋。背が高い俺達にとっては快適に過ごせる部屋だ。俺よりも小さくて細い腕の何処にそんな力があるのか、畳に投げられる様に部屋に入った。摩擦で少し腕や脹脛がヒリヒリする。我慢しながらなまえと向き合う。主にも言われたのだが、俺となまえは雰囲気は似ている。"昔の自分"に似ている。でも翡翠の瞳は自分とは違っている。変な気分だ。
「ねぇ御手杵さん」
どうしてあの時に逃げたのですか?
その言葉が胸に突き刺さった様に思った。
「俺は、槍なんかよりーー」「そんな事は分かってます。…でも、」
分かってるなら放っといていいものを。突く以外に能がない自分に付き纏って何が楽しいのだろうか。それよりは、日本号と酒を飲みながら、蜻蛉切と鍛錬しながらの方がきっとなまえには合う。
「御手杵さんは、俺の憧れだから」
「"感謝の気持ちをずっと持ち続けたい。"そんな理由で俺は生まれました」
「でも、今日まで御手杵さんと合った事がありませんでした」
「前の主がずっと、御手杵さんの前の主の話をしてくれました。あの方は凄いのだ、あの槍は素晴らしいのだ、と」
「それにつられて俺の願いは膨れ上がって」
「それが、今日叶ったんです」
ぽつり。ぽつりと囁くように言うその姿は俺と真逆だった。
「それは、理由にならないだろ?」
思わずこんな返答をしてしまった。勿論だがなまえは鶴丸並に驚いている。翡翠の瞳が左右に揺れている。
「俺の事を憧れているなら、放っておいてくれよ」
そのほうが、ずっと楽なのだ。
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