ロックガール、ついに旅立つ


待ちに待った!!!
9月!!!1日!!!

キュイイーン!とギターを鳴らせばキングス・クロス駅前で注目を買った。イエーイみんな見てる?!あたしが未来のロックスター、エリン・エーカーだよ〜!

「バカかお前は!」
「いったぁ!」

ハルに後頭部を思い切り叩かれた。マジ痛い!なにするんだ!大事なメロディーが吹っ飛ぶだろ!
あたしの後頭部なんてお構い無しに、くどくど小声で説教してくるハル。

「魔法をかけてもらったギターを、マグルだらけのところで演奏するなと!言っただろう!」
「へーい、すみませんでしたぁ〜」

そう!あたしのこのギター、シェリルさんにいくつか魔法をかけてもらったんですよ!

まずひとつ。ホグワーツでギターケースを持ち歩くのは危ないから、とギターを小さくしてもらった。いつもは手のひらサイズなんだけど、なんと!指で3回叩くと元の大きさに戻るのだ!ギターケースからギター出すよりちょ〜う楽!ちなみに4回叩くと手のひらサイズになります。

ふたつめ。このギターはエレキギターなので、アンプがないと音が響かない。
で・す・が!ふたつめの魔法により、このギターはアンプなしでも音が響くようになりました〜ハイ拍手!!ぱちぱち!
…だから駅前で注目されてるわけです。そしてハルに叩かれたわけです。

この他にもうひとつ…シェリルさんはなにか魔法をかけたみたいだけど、それについては「内緒よ!」と言われてしまった。残念っ!

「反省してないだろ」
「仕方ないじゃん…テンション上がると弾いちゃうの癖なんだよ…」
「ならその癖は治すべきだな」
「チッ」
「こんなところで喧嘩しないでちょうだい」

シェリルさんの介入により休戦。ママも苦い顔してるしここは引いてやろうワハハ!……ちくしょー覚えとけよ…。
あたしはトランクの影でギターを小さくして、それからポケットにしまった。

「エリン、あんまりハルに迷惑かけないでね」
「ママまでそんなことを…!」
「事実じゃないか」
「ぐぬぬ…!!」
「早くしないと乗り遅れるわよ」
「「はーい」」

ホグワーツ特急が出るホーム、つまり9と3/4番線とやらに向かうわけだが…果たしてそんな中途半端な数字のホームあったかな?
キングズ・クロス駅には昔仕事へ向かうパパのお見送りで来たことあるけど…そんなホームは見たことない。たぶん。
あっ、ちなみにパパは今日も仕事のためお見送りには来れませんでした!でも家を出る前に散々ハグしたし、やたら心配されたし、あとロックの話もかなりしたし、平気!
もちろん手紙を書く約束もした。ホグワーツに着いたら早速書こうかなと思っている。

「さて、ホームへの行き方だけど…あそこね」
「え、柵じゃん」

シェリルさんが指をさしたところは、9番線と10番線の間にある柵。見たところ開きそうにはないけど…えっ、まさか通れんの?通れちゃうの?

「マグルに見られないよう気をつけて…ハル!あなたからどうぞ」
「分かった」

ハルは人ごみのタイミングを見計らってカートを押しながら柵の中へ消えていった。
マジかよ!!!消えたんですけど!!!なにこれ超ロックじゃん!!いやマジカル!

「じゃあ次はエリン。ハルみたいにやってごらん」
「うっわ〜テンション上がるな〜!!では、行きマース!」

うまーくマグルがいなくなったタイミングでカートとともに柵へ歩く。ハルと同じく柵にはぶつからず、ぬるっと吸い込まれた。
面白いじゃん!!
…なんて思いながらそのまま進むと…

「どひゃー!すっご〜い!!!」

人、人、人!ホグワーツの生徒と思われる大荷物の人!あたしと同じく新入生の人!
そして真っ赤な汽車!
ギターを出して1発かましたいところだけど、またハルに怒られそうだからやめておこう。うん。だってギター出そうとしたら目の前で待ってたハルに睨まれたから。はい、やめますって!睨むな!

「すごいよな…ホグワーツ特急はボクも初めて見た」
「ね!!これに乗るのか〜」
「さ、二人とも!荷物を汽車に乗せないと!」

いつの間にやら後ろに現れていたシェリルさんとママ。マグルのママも通り抜けられたようで一安心。
いよいよホグワーツかぁ…は〜楽しみすぎる!

***

ちょうどよく空きコンパートメントを見つけたので、あたしとハルはそこに荷物を積む。トランクはシェリルさんが軽量化魔法をかけてくれていたので楽に積むことができた。
ハルの梟の籠(中にいるのはあたしの手紙をホグワーツに届けてくれた灰色の子!名前はまだ聞いてない)を椅子の上に置いてから1度汽車を降りる。
ふたりに挨拶するためだ。

「ママ!未来のロックスター、エリンは更なる刺激を求めてホグワーツへ旅立ちます!!」
「うん…エリンならきっと上手くやれるわ!」
「任せて!あ、パパのことよろしくね!」
「はーい」

あたしはママとハグをする。ママは優しく頭を撫でてくれた。ママ、少し寂しそうだなぁ。
あたしは…寂しくないと言えば嘘になるけど、でも不安より期待の方が大きい。ロッカーはポジティブに!これパパがいつも言ってた!

「エリン、困ったときはハルと協力してね」
「ハルが協力的だったらね!」
「おい」
「ハルもエリンも…気をつけて。何かあったら梟を飛ばしなさい。それから本当にピンチのときは…ううん、なんでもない。あなたたちふたりならきっと大丈夫!」
「うん、母さん」
「あたし、やるよ!」

シェリルさんともハグをした。やっぱり大人のいい匂いがして、なんだか安心する。ママもいい匂いがするけど、それとはまた違う匂い。

「さ、もうコンパートメントに戻りなさい。もう時期発車するわ!」
「うん!それじゃあ…行ってきます!」
「行ってきます」

あたしとハルはママとシェリルさんに手を振って再び汽車に乗り込む。さっき荷物を積んだコンパートメントに戻り、窓を開けた。
少し離れたところに、ふたりの姿が見える。ふたりはこちらを見つめている。

「ホグワーツ、楽しみだなぁ!」

あたしの言葉にハルは笑って頷いた。

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