ロックガール、杖を持つ


最後に買うのは杖。紀元前からやっているという(紀元前?!これがマジなら超ロック!)オリバンダーのお店の前でママとシェリルさんが来るのを待っている間、暇なのでギターを取り出してジャカジャカしてたらまたハルに怒られた。とりあえず無視。


「おっ、ママだ!お〜い!」
「お待たせ、ふたりとも」
「あらやだエリン、またギターなのね」
「ボクは止めました」

ふたりが来たのでギターをケースにしまってお店の中に入る。やっべすげー箱がいっぱいある!これ中身はぜーんぶ杖なんだろうな…中見てみたいけど、勝手に開けたら怒られるだろうからやめとこ。さすがにお店の人に怒られたくない。

「こんにちは!」
「元気なお嬢さんだねぇ」
「エリン・エーカーです!元気が取り柄です!」

お店の奥から出てきたオリバンダーさん(おじいちゃんだ!只者じゃなさそうな気配)に挨拶する。

「エーカー…なるほど。やあシェリル。元気かね?」
「元気よ。うふふ、今年は私の息子のハロルドと、弟の娘のエリンが入学なの」
「ほう、実に賑やかになりそうですな…。ではハロルドさんから見てみましょうか」

杖はハルから見てもらうことになった。

「杖腕は?」
「左です」

「ねーシェリルさん、杖腕って?」
「利き腕のことよ」
「へぇ…なるほど」

お店の中をウロウロしつつ、横目でハルの様子を見た。ハルの横には棚から持ってきた箱がいくつも積まれていて、中身はやっぱり杖だった。ハルはその1本1本を手に持って軽く振っている。振ってもなにも怒らなかったり、店内に強い風が吹いたり…その度にオリバンダーさんは少しむずかしい顔をして新しい杖を渡す。中にはハルが持った瞬間「ちがうな」と別の杖を渡すときもあった。

でも、こういうの分かる!あたしもこのギター選ぶとき時間かかったもん。色とか、持った感じとか…あたしは当時小さかったから、重さも大事だったな。大きくなった今となっては、さすがに少し軽すぎるかなと思っているけど。

と、背中のギターケースを見ている間にハルの杖が決まったらしい。

「この杖はきっと君の力を引き出す手助けをしてくれるだろう」
「ありがとうございます。大切にします」
「次はエリンさんを拝見しようかね」
「は〜い」

ハルと同じく「杖腕は?」と聞かれたのであたしは右手を出した。
すると制服採寸のときみたいに巻尺がスルスルとあたしの腕を測り始める。

「では…まずはこれ。柳にドラゴンの心臓の琴線。24センチ」
「はーい」

ひょいっと振ってみるが何も起こらない。オリバンダーさんに杖を返してもう1本。

「サンザシにセストラルの尾の羽、23.5センチ」
「ほいっ!」

またもやなにも起きない。むむむ。
その後も何本かとっかえ引っ変えしてみたけどなかなか決まらない。あたしも「コレだ!!!」って感じがするものに出会った気はしなかった。
こういうモノは妥協して選ぶと後で後悔するから慎重にならなくては…とは思ってるけど、さすがにちょっと心配になってくるよね。絶対ハルより時間かかってるし…もしかして入学許可は間違いだったのでは?なんつって。

「うーむ…ではこれを。ネコヤナギに一角獣の鬣、26センチ」
「はーい……おっ?」

違った。これまでの何本とも。まだ杖を振ってないのに分かる。

「あたしの相棒は---これだ」

ひょいっと振るとネコヤナギの花恵がふわりと舞った。オリバンダーさんは満足そうに笑っている。ママは「素敵!」と手を叩いた。

「この子、すっごくいい」
「魔法使いが杖を選ぶのではなく、杖が魔法使いを選ぶ。貴女は選ばれたのですよ、この杖に」
「そうなんですかぁ…へえ、嬉しいな!この杖かっこいいし!」
「柄に使われているネコヤナギの花言葉は---『自由』『開放的』…『思いのまま』。エリンさんにぴったりではないかな?」
「ワーオ、超ぴったりだよ!」

なんてロックな杖なんだ!
オリバンダーさんは杖に選ばれたって言ったけど、あたしがこの子を選んだような気もする。惹かれ合う…みたいな?ウーン、ロックもロマンスも感じるね!最高だ!

「エリン、よかったわね。ママもその杖素敵だと思うわ!」
「早速だけどめっちゃ気に入っちゃった〜!早くこれで魔法習いたいな!!」

杖を手に入れてウキウキなあたしは、9月1日がとっても待ち遠しくなった。いつもは終わって欲しくない夏だけど、今年ばかりは早く終わってもいいぞ!

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